若い頃はフリーター、縁故入社の会社もすぐ辞めた。そんな柳井氏を育てたのは「仕事」だった──。日本一注目される経営者が語る「希望の人生論」とは。
柳井氏の著書『柳井正の希望を持とう』(朝日新書)は朝日新聞土曜版「be」に連載されたコラムをベースに加筆修正された1冊。自著の中で「最も面白い」という声も。
――まず、まえがきが熱い言葉です。そして、本書(『柳井正の希望を持とう』)のまえがきは今の時代に必要な言葉だと思いました。

【柳井】私が指摘したのは大震災では日本人の美点ばかりが語られているが、同時に日本人のよくないところも浮き彫りになったということです。

よくないところとは、程度を超えた自粛、そして自主規制です。繁華街の商店は看板の照明を消し、デパートは営業時間を短縮した。テーマパーク、遊園地、ゴルフ場なども軒並み、自主規制で営業時間を短くしたり、施設を休止したり……。

しかし、そんなことを続けていて、日本経済は復興するのですか? 我々ビジネスマンは稼ぐことが使命です。働いて、金を稼いで生活を豊かにする。金が回るようにして、日本の景気を上向きにしていく。戦後に戻ったようなものです。再び高度成長に向かう気持ちで働かなければ復興はできない。

加えて、自粛と自主規制の問題は、自分の頭で判断していない点にある。世の中の空気に流されて、世の中に配慮して、なんとなく自粛しているだけです。

「隣の店が看板の照明を消したから、うちも消そう」
「商店街のほとんどが早めに店を閉めるから、うちもそうしよう」

横並びの思想です。自分で結論を出したわけではない。これから問われるのは自分の頭で判断して、決めること。周りの空気、隣の人の行動に左右されるなんてことは情けないことだ。