ユニクロを展開するファーストリテイリングは日経平均を最も動かす銘柄と言われている。同社の元執行役員である宇佐美潤祐さんは「ユニクロの強さは柳井正さんの強烈なカリスマによるトップダウンによるもののみではない。むしろその真逆のところにある」という――。

※本稿は、宇佐美潤祐『ユニクロの仕組み化』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

ユニクロの40周年記念記者会見で話す柳井正氏
写真=Blondet Eliot/ABACA/共同通信イメージズ
2024年9月30日、パリで行われたユニクロの40周年記念記者会見で話す、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏

ユニクロは企業価値創出力が半端ではない

「ユニクロ」は、みなさんにとってどんな存在でしょうか?

「LifeWear(究極の普段着)」を標榜しているユニクロは、みなさんの生活の一部になっているのではないでしょうか?

柳井正という創業経営者が率いて、日本だけでなく海外にもたくさん出店し、成長を続けている会社。服のリサイクルを積極的に行い、難民にリサイクルした服を届けている会社。ユニクロの名前を知らない人はほとんどいないと思います。

こうやってみなさんによく知られ親しまれているユニクロですが、ユニクロの本当のすごさを理解している人は少ないのではないでしょうか? ユニクロの何がすごいのか?

企業価値創出力が半端ではないのです。図表1は、日本の時価総額トップ10企業の時価総額とPBR、ROE、PER(それぞれ解説は後述)を比較したものですが、ユニクロを展開するファーストリテイリング(以後、FR。なお、本書ではわかりやすくするため特別の場合を除きFR=ユニクロとします。FRの子会社である事業会社のユニクロを示す場合は「事業会社ユニクロ」とします)は時価総額14.5兆円で第7位となっています(2024年8月23日時点)。

30年前の売上の約100倍に到達目前

1984年に広島でユニクロの1号店を出して今年でちょうど40年ですが、地方の新興アパレル企業に過ぎなかったユニクロが、今やトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、キーエンス、ソニーグループ、日立製作所、リクルートホールディングス、NTT、三井住友フィナンシャルグループ、信越化学工業といった日本を代表する企業と伍しているのは、本当に、素晴らしいことです。時価総額を比較していただければわかる通り、トヨタは圧倒的規模を背景に頭抜けていますが、2位以下は接戦で、さらに上位をうかがえる可能性もあります。

ここで留意いただきたいのが、企業価値・時価総額はユニクロにとって結果指標でしかないということです。後ほど詳しく述べますが、ユニクロは誰のためにあるかというと、お客さまのためにあるということが社員ひとりひとりに浸透しています。

お客さまの期待を超えることを懸命に追求し続けた結果、売上高は2023年8月期決算で約2.7兆円となり、3兆円を完全に射程にとらえています。これは同社の30年前の売上高の約400倍と、驚異的な成長を示しています。実際、日本の上場企業の売上高上位100社のうち、30年前と比較可能な企業の中で最も高い伸び率となっています。