株式市場での将来の成長期待を示す指標「PBR」

時価総額で第7位ということだけでもすごいのですが、企業価値創出を因数分解して見てみると、ユニクロのすごさがもっとわかります。みなさんはPBRという言葉をご存じかとは思いますが、念のため説明しておきます。

PBRとは「Price Book-value Ratio」の略で株価純資産倍率です。時価総額÷純資産額で算出され、株価が一株当たり純資産の何倍まで買われているかを見る投資尺度です。

現在の株価が企業の資産価値(解散価値)に対して割高か割安かを判断する目安として利用されます。つまり、PBRが1倍を切っていると、今会社を解散する方が株主にとってはメリットがあるということになります。近年政財界でもPBR1倍を超すことの重要性がいわれています。

このPBRは、ROE×PERに因数分解できます。ROEは言うまでもなく自己資本利益率で、当期純利益÷純資産額で算出され、足元の収益性・資本効率の指標です。2014年に出された「伊藤レポート」で日本企業はROE8%を目指すべきという提言がなされ、その功罪についてはいろいろな意見がありますが、注目されてきた指標です。PERは株価収益率で時価総額÷当期純利益で算出され、当該会社の株式市場での将来の成長期待を示した指標です。

屋外の電光掲示板に表示された株価ボードを眺めるビジネスマンの背中
写真=iStock.com/chachamal
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リクルート、キーエンスを上回るPBR

ユニクロをこのPBR=ROE×PERの因数分解で日本の時価総額トップ10の企業と比べてみると(図表1参照)、PBRは6.56倍でリクルート、キーエンスを上回り1位、ROEは17.51%でリクルートについで2位、PERではキーエンスを上回り1位となっています。つまりユニクロは足元の経営効率が高いのみならず、将来の成長期待でも高い評価を受けているということです。

キーエンス、リクルートも似たような評価を市場からは受けていますが、他のトップ10に入っている企業は、ROEはそこそこ高いのですが、PER(将来の成長期待)が低く、ユニクロ、キーエンス、リクルートに比してPBRで大きく劣後していることがわかります。

つまり企業価値創出効率の劣後を規模で補い、絶対額としての時価総額を捻出しているということです。企業価値創出の効率性でいえば日本で時価総額トップ10企業の中でNo.1となっているのがユニクロなのです(もちろんスタートアップでもっと高いPBRの企業もありますが、時価総額トップ10という大企業のトップ・オブ・ザ・トップの企業の中で見ると、紛れもなくNo.1です)。