――おふたりに共通のものは何かありますか?

 私は経営者として柳井さんと共通しているのは危機感だと思う。のほほんとやっていたら、あっという間につぶれてしまうのがベンチャーです。ベンチャー企業イコール危なっかしいってことですよ。だから、柳井さんがはらはらして見ている(笑)。しかし、私は自分の人生は波乱万丈ではあるけれど、やってる本人にしてみれば面白くて仕方がない人為だと思っている。何度でも孫正義の人生をやりたい。たとえ無鉄砲だと言われても……。

柳井 もうひとつの共通点はアウトサイダーだということ。孫さんと僕だけでなく、レイ・クロックも藤田さんもアウトサイダーから出てきた人間です。レイ・クロックはセールスマンだったし、藤田さんはダイヤモンドやハンドバッグの輸入商でしょう。どちらもハンバーガーの玄人じゃない。僕だって銀座や青山でファッションビジネスを始めたわけじゃない。山口県の宇部なんて炭鉱があるだけで、とてもファッションの中心とは呼べない。孫さんだって徒手空拳でIT業界に乗り込んだ。みんなアウトサイダーから出発し、常にアウトサイダーとして既存の業界に挑戦している。だから、常にリスクのある挑戦をせざるをえない。逆にインサイダーの側からベンチャーが出てくるのは難しいかもしれない。

 アウトサイダーとして業界に挑むには大きな困難がついてくる。しかし、それを乗り越えていくのが生きている実感なんです。私にとっては。

柳井 孫さんも僕もそうだと思うのだけれど、仕事がいちばん楽しいんですよ。どんなことよりも面白い。趣味のゴルフをやるより、仕事のほうがはるかに充実する。

 そうですね。ただし、柳井さんが私の仕事を見ているとはらはらする、と。

柳井 そう(笑)。その通りです。

※対談は『成功はゴミ箱の中に』(プレジデント社刊)に収録されたものです

(構成=野地秩嘉 撮影=大沢尚芳)
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