役員会だけじゃなくて、私は自分の部屋に若い社員を呼んで、長い時間、議論したりする。なかなか外にはそういったイメージが伝わっていないけれど。

柳井 それはいけない。そこは直さなきゃ。

 そうですね。確かに。柳井さんは役員会で私が案件を説明すると、たいてい反対する(笑)。投資としては高すぎるからやめておけとか、持ってる資産を早く売れとか……。ただ、ボーダフォンを買収すると発議したときは真っ先に賛成してくれた。早く買うべきだと発言された。

柳井 そうです、僕はあの案件には賛成しました。あれは今後のソフトバンクにとって絶対に必要なものです。買わないことのリスクのほうが高いと判断しました。だって、ソフトバンクはすでに通信の闘いのなかにいる。これから攻めていかなきゃならないのに、武器を買うか買わないかなんて話をしていたら闘いにならない。

まあ、話を戻すと意見を自由に言える社風は大切です。僕はいつも言うのだけれど、社長の指示した通りに現場の社員が実行するような会社は間違いなくつぶれます。現場の人間が「社長、それは違います」と言えるような会社にしておかないと知らず知らずのうちに誤った方向に進んでしまう。ただし、現場の社員は社長が本質的に何を指示しているのかを理解しておくこと。それを現場の判断で組み替えていくのが仕事なんです。

 役員会や社内会議でよくありがちなのは肩書が上の人の意見が通ってしまうこと。ある意見に対して、正しい、間違っているという判断でなく、「これは社長の意見だから、あれは部長が言ったことだから」と通してしまうと、誰も意見を言わなくなる。新入社員の発言でも、それが正しいことならば会議を通るという体質にしておかないと、会社は成長していきません。