EVより電気を使う合成燃料は「非効率」

――35年以降、eフューエルを使う車をどう扱いますか。

(eフューエルは)恐らく内燃機関を使います。こうした自動車は、欧州で造られることはないでしょう。通常、自動車のライフサイクルは最長で15年程度です。ですから、私たちがEUで排出ガスゼロを達成したい50年までには、完全にクリーンな車両を保有することができるようになるのです。

eフューエルは、自動車やバンにとって非常に非効率的です。(製造過程で)EVよりも多くの電気が必要です。そして、航空業界で需要が大きくなります。ですから私たちは、ニーズが大きいと思われる航空産業で、eフューエルの可能性を追求したいと考えています。なぜなら航空機の電動化は、自動車やバンの電動化よりもはるかに複雑だからです。

――もう一度聞きます。35年以降にeフューエルを使う車は販売できないのですね。

排出ガスがなければ可能です。しかし、燃料を燃焼させながら排出ガスが出ない車は見たことがありません。その意味で、排出ガスフリーにできなければ、EUで生産することも、EUで市場に出すこともできないのです。

ハイブリッド車の新車販売は禁止に

――トヨタ自動車が力を入れているHVの新車販売が35年に禁止されることについては、最終的には各国の判断に委ねられるのでしょうか。

いえ、これはEU全体の決定事項です。HVは今すぐ市場から撤去されるわけではなく、まだそこにあります。ただ、35年時点では、新しいHVは市場に出回らなくなります。

正直なところ私が望んでいることですが、内燃機関について取り組んでいるのは、最も環境負荷が高いものをまず市場から排除するためです。ですから、35年以降もしばらくはそれ以前に発売されたHVが市場に出回りますが、新車は販売できません。しかし、HVの量は相当なものになるでしょう。

欧州の自動車メーカーは、水素をベースにした燃料電池車の開発に取り組んでいますね。水素を使った燃料電池については、トヨタと独BMWが非常に良い協力関係にあると思います。

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