「クルマから出る公害」を減らしていく

――排ガスの規制を強化する「ユーロ7」では、タイヤやブレーキパッドから飛散する粒子状物質も規制します。この規制は、今後強化される可能性があると思いますか。

欧州委員会の内部で取り組んでいるところです。まだ提案はしていません。私たちがやりたいのは、パワートレーンに関係なく、全ての乗用車に適用される基準を打ち出すことです。

というのも、ご存じのようにEVは内燃エンジン車よりも重いからです。そのため、より強力なブレーキが必要で、より多くのタイヤを使用することになります。ブレーキパッドやタイヤから出る公害を減らすようにしなければなりません。

特にタイヤについては、私たちの健康にとって本当に危険なマイクロプラスチックに注意しなければなりません。その他の問題については、まだ決定していません。欧州委員会の内部で議論しているところです。

私たちは、自動車産業にあまり負担をかけたくありません。なぜなら、自動車産業の投資能力を、35年までにEU市場から姿を消す内燃エンジンに費やすよりも、電動車や水素ベースの燃料電池車に移行するためにできるだけ使ってもらいたいからです。

存在感が増している中国勢EVの脅威

――自動車産業は多くの雇用を抱えているため、それぞれの国にとって非常に重要な産業です。既にEVシフトに伴い、人員を削減したメーカーもあります。EVシフトで、欧州の自動車産業は競争力を保ち、雇用を維持できると思いますか。

競争力の強化につながると考えています。国際的に何が起こっているのかを見なければなりません。日本とも一緒にやっていけたらと思います。日本の自動車産業ともっと協力してやっていきたいですね。

中国で何が起こっているかを見てください。中国企業は既に多くの新型EVを発表しています。ほぼ毎日、新しい名前の車の広告を目にしますよね。見た目もいいし、専門家によると非常に良い車だそうです。これはもちろん、中国勢が電池産業で持つ優位性を利用し、既存の自動車産業を追い詰めようということでもあるわけです。米国はインフレ抑制法(IRA)の下で、EVや電池の開発にも大量に投資し始めるでしょう。