20代の生命保険や医療保険の加入率は55%と低い

20代以降の若年成人は、就労し、精神的にも経済的にも自立しつつあるが、次世代を生み、育てていかなければならないという気持ちが強く、妊孕性(妊娠する力)の問題が重くのしかかる。

筆者撮影
AYA研理事長の清水千佳子さん

また若年世代の生命保険、医療保険の加入率は低く、20代では55%にとどまる。特に低所得のAYA世代・被保険者の治療関連費、治療以外の負担(入院費差額、交通費、ウイッグ代など)の支出の負担感は大きい(厚労省AYA世代のがん対策の在り方調査より)。

特に治療中では、働きたくても働くことができない人が28%いるという調査もあり、就労の問題は深刻だ。

自分の描く未来は、個人によってさまざま。同じ年齢であっても自立の程度もさまざまで、画一的にはとらえられない。

「結局、勝ち残った人が、私はこうやって生きてきました、がんに勝ちましたということが出るので、プロセスが何もわからない。知らない人は、そういうものかなと思ってしまいます。本当は苦しくて声を上げたいのに、上げられない人がAYA世代にはいます。死ぬかもしれないという話を公然としていいものなのかという日本の文化もありますし――。

確かに30年前のがん治療と違って、本当に治るようにはなってきましたが、問題を抱え、そこからこぼれ落ちる人は、いるのです。少なくとも医療従事者は見落としてはいけないと思います」

「なんだか、がんの手術するらしいよ」と友人に告げた

ユーイング肉腫になった山本さんの1カ月の入院生活を支えてくれたのは、家族と友人の存在だった。

「母に質問しても、もうちょっと検査が必要だというばかりでしたが、私としてはすがるところは母しかないのでその言葉を信じるしかありません。

友達には、『なんだかがんらしいよ、明日手術するの』と携帯で伝えました。驚いていたとは思いますが、本人が明るいし、『なんかわかんないけれど、頑張って』って言ってくれました」

山本さんの手術は、がんの病変は切除できたが、その後、化学療法を余儀なくされた。そのため、化学療法では定評のある別の大学病院に転院した。そこで医師に尋ねられた。

「今まで検査をたくさんしてきたと思うけれど、自分でだいたいどういう状況かわかってる?」
「私がんなんですよね。風邪だったら絶対に手術なんてしないし、こんなに隠されているのは分かっているけれど、大きい病気と言ったら、がんしか思い浮かびません」