劇的な進化を遂げたエンジン

新型ロータリーエンジンは最新の直噴技術を採用。燃焼室形状も新しくなり、全体もアルミの活用により軽量化され、燃焼効率も高まっている。ガソリンでの走行時(シリーズハイブリッドとして走行時)の燃費はWLTCモードで15.4km/Lである。せいぜい6~8km/LといわれていたRX-8の燃費に比べると劇的な進化である。

この数字は、世界最高の効率を誇るトヨタのプラグインハイブリッド車には劣るものの、欧州のプラグインハイブリッド車とは十分肩を並べることができるものだ。宿命的に燃費には不利なロータリーエンジンを使ってのこのデータは、かなり健闘していると考えて良いのではないだろうか。

燃料タンクは50Lの容量を持つため、航続距離はWLTC燃費で単純計算すれば107+15.4×50で877kmとなり、相当なロングドライブでも安心である。

自社にしかできない技術を生かした「作り手の答え」

このメカニズムはマツダらしい、マツダにしかできないユニークなものである。

また、燃費性能で不利なロータリーエンジンには未来がないと一般的には思われていたにもかかわらず、ロータリーエンジンに生き延びる道筋を作ったマツダのエンジニアの執念でもある。

写真提供=筆者
マツダの工場で新型ロータリーエンジンを組み上げるエンジニア

通常はあくまでBEVとして使い、たまの長距離ドライブの時はロータリーエンジンの音を奏でながら走る。十分に地球環境に貢献できるし、マツダ車でなければ味わえない、固有の運転の楽しさも味わえる。

「ブランド」とは何か

ユニークすぎて自動車業界全体に対する影響力はないが、マツダブランドを際立たせ、象徴するモデルになることは確かだろう。

現在のところ、既存の補修用ロータリーエンジン製造ラインを改修して製造しており、ロータリーエンジンを組み立てるための「匠の技」を持った従業員も限られるため、年間最大2万台(販売地域は欧州と日本。日本の目標販売台数は月販300台)という製造上の制約がある。

従って、台数的にはビッグヒットにはなり得ないが、マツダの意地と執念が生んだこのユニークな車が実際に市販され、公道を走れるようになったことを心から祝福したいと思う。

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