2012年の販売終了、伝承されていた独自技術

しかし、ロータリーエンジンには致命的な欠点があった。構造上、熱損失が大きく、低回転域では熱効率が悪い。つまり燃費が良くないのである。

1973年のオイルショックは、マツダに致命的な打撃を与えた。それ以降、コンパクトなサイズとスムーズな回転と高出力という特性を生かせるスポーツカーのみにロータリーエンジンは採用されるようになった。そして、2012年、RX-8の生産終了とともにロータリーエンジン搭載車の販売は終了する。

しかしマツダはロータリーエンジンを諦めてはいなかった。

規模こそ大きく縮小したものの、補修用のエンジンを細々と作り続けるための組み立てラインを残していた。またロータリーエンジンを組み立てるのに必要な匠の技を小数の従業員に伝承させていた。開発も細々と継続し、復活の日を待ち望んでいたのである。

「弱み」を「強み」に変える戦略

今回、なぜプラグインハイブリッドにロータリーエンジンを採用したのか。ロータリーエンジンは低回転域が苦手だが、効率の良い回転域だけを使えば燃費を伸ばすことができる。発電専用として、得意の回転域だけ使えば燃費問題をかなり克服できるのだ。

またロータリーエンジンは小さく、振動も少ない。ロータリーエンジンを使えば、スペースに制約のある小型車のプラグインハイブリッド化も可能だ。

このようなことから、MX-30 Rotary-EVはロータリーエンジンを発電専用に使うプラグインハイブリッド車となった(大型のCX-60 PHEVはマツダもレシプロエンジンを使っている)。

2012年以来のロータリーエンジン「復活」
写真提供=マツダ
2012年以来のロータリーエンジン「復活」

日常生活ではBEVとして運用可能

エンジンはスペースが最小で済む830ccの1ローターである(従来のマツダロータリー車は2ローター1308cc)。

パワートレーンの断面を見ると、電気モーターとロータリーエンジンが同軸上に並び一体化しており、メカニズムとしても非常に美しい。エンジンの出力は53kW(72馬力)だが、駆動用のモーターは125kW(170馬力)とパワフルである。

バッテリーは17.8kWhの容量があり、フル充電で電動走行が107km可能だという。107kmあれば日常のほとんどの場面では十分だろう。つまり、ほぼBEVとして運用可能だ。長距離走行時にはロータリーエンジンの出番となる。