「23年間、絶望したまま」

アマチュア性を大切にした、歌って踊れる少年グループ、ジャニーズはお茶の間の人気者となる。当時の芸能界には斬新に映った彼らのデビューと成功によって、少年たちの育成とマネージメントはビジネスとして体系化され、ジャニーズ事務所の設立へと至った。そして「見習い」「弟分」として、タレント予備軍の少年たちが稽古場や合宿所へ出入りし、「ジャニーズ・ジュニア」という独自の育成体制が整えられていったのだ。

周東氏が同書の中で指摘するように、「ジャニーズ・ジュニアの仕組みは、このアイドル工房の核心」であり、プロデューサーであるジャニー氏へコンスタントに少年たちを供給する、非常によくできた装置でもあった。

『週刊文春』で20年前のジャニーズ記事を取材・執筆したジャーナリスト、中村竜太郎氏はBBCの番組インタビューに応じ、この問題が日本社会に広まらず黙殺され続けることに「23年間、私は絶望したままですね」と語った。

これが、大人の男性から少年に対する深刻かつ悪質な性加害であるということが、日本社会には理解できず、「そんなの被害じゃない、いたずらだ」「男にはそんな経験もちょっとした冒険みたいなもの」「結局それでデビューできたんだから、お互いさまじゃないの」と過小評価されて少年たちには沈黙が強いられ、BBCショックのあった今も「加害者は不在だし、もう終わったことだから、あえて言わなくていいじゃない」と皆で沈黙する。

もし被害者が未成年の少女たちだったら、明確な犯罪と認識され、まるで違う反応になったはずだ。ここにもまだ、日本のいびつなジェンダー観がくっきりと色濃く取り残されているのである。

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