逆境がマイナスかはすぐにはわからない

といってもそれですぐモヤモヤが静まるほど、できた人間でもございません。そこで次に自分が何をしたくて今の仕事を選んだのか、初心に帰りました。それをしたらぶれへんと思うんですよ。僕が新喜劇に入った目的は、嫁はんにビッグマネーをパスするためであり、お笑いの世界に入ってお世話になった人たちに恩返しするため。そこで「じゃあ耐えなあかん」と確認できる。読者のみなさんも何かを背負って仕事してるわけでしょう? 大体、自分の進む道が舗装された道路じゃなくてジャングルのいばら道ということはもともと知っていたはずで、そう考えればアホな上司がちょっかい出してくる状況だって自分自身で選んだと言えます。上司のせいにせず、なんなら自分がこの災難を招いてるぐらいの感覚でとらえたほうが、ストレスはたまりません。

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「嫌いな上司」の条件ワースト10

逆境は受け入れてしまったほうがいいんです。僕が吉本新喜劇に入ったとき、芸歴9年あったのにまったくの新人と同じポジション、同じ給料からのスタートでした。そしてその後も「出る杭は打たれる」という言葉がなかったら自分で思いついたであろうほど上から打たれた。つらかったけど、その環境だったから頑張れたし、マジメに勉強した結果、新喜劇とは何たるかを理解できたと思えます。

天台宗の大阿闍梨が書かれた本にも似たようなことが記されてました。その方は千日間、山を歩く修行をしていて、雨が降ると雨着の裾から露が入ってくる。イヤやな、と思いながら山を潜り抜けたら、雨の水分が空気中で輝いて、陽が非常に美しく見えたそうです。一瞬イヤなことでも、それがトータルでいいことか悪いことか、そのときは判断つかないんですね。今はアホな上司が自分に雨を降らしてくるとしても、それを糧にしたり反面教師にしたら、いつかは美しい陽を拝めるかもしれません。

だから座長になった今、僕はアホな上司に感謝してるかというと……全くしてません! でも、「よくぞあのタイミングであの人を上司に置いてくれた神様、ありがとう」と思っています。

吉本新喜劇座長 小籔千豊
1973年、大阪府生まれ。吉本新喜劇座長として百戦錬磨の芸人を束ねる。「知りたがり!」「テレビで基礎英語」「バカソウル」などテレビのレギュラー出演も多数あり。音楽ユニット「ビッグポルノ」結成、CDリリースを果たした。
(構成=鈴木 工 撮影=キッチンミノル)
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