中国の再反論に対し、外務省が“再々反論”する事態に

これに対して、外務省は公式ホームページを通じて、次のように“再々反論”し、珍しいことに、朝日新聞や共同通信、TBSなどのメディアが、国内向けではあるが、この要約をこぞってニュースとして流した。TBSなどの場合は「公共の電波」を使わせてもらっているのだから、義務を果たしたということだろう。

1.ALPS(多核種除去設備)は62の核種を確実に除去するように設計されているが、半減期を考慮すべきなどのIAEAの指摘を受け、処理前の水に現実的に存在し得る核種は29核種であると考えている。IAEAは、包括報告書において、この選定方法は「十分保守的かつ現実的」と評価している。また、日本の分析に加え、IAEA及び第三国機関の分析でも、その他の核種は検出されていない。こうした内容については、原子力規制委員会の審査やIAEAのレビューを通じて公開されている。

2.日本は、東京電力福島第一原子力発電所の事故後、政府が定める「総合モニタリング計画」に基づいて、包括的かつ体系的な海域モニタリングを行っている。同計画においては、東京電力のみならず、環境省、原子力規制委員会、水産庁及び福島県がモニタリングを行っており、その結果については各省庁のウェブサイト及び包括的海域モニタリング閲覧システム等において公開されている。放出開始後のモニタリング結果は、ほとんど検出下限値未満であり、検出されたものも極めて低い濃度であり、安全であることが確認されている。

3.ALPS処理水のモニタリングについては、IAEAレビューの枠組みの下で、IAEA及びIAEAから選定された複数の第三国分析・研究機関が、処理水中の放射性核種を測定・評価するソースモニタリングの比較評価及び環境中の放射性物質の状況を確認する環境モニタリングの比較評価を実施してきている。現在実施されているIAEAによる比較評価には、IAEAの放射線分析機関ネットワーク(ALMERA)から、米国、フランス、スイス及び韓国の分析研究機関が参画している。IAEAによるモニタリングは、IAEAを中心としつつ、第三国も参加する国際的・客観的なものだ。

処理水海洋放出をめぐり、外務省が発表した回答(外務省公式ホームページより)

NHKより在日米国大使のほうが「国益に寄与」

ところが、NHKの国際放送は、中国への反論としてもっとも有効なこの説明を、いまだ海外向けに報道していない。巨額の交付金を受け取りながら、「国の重要な政策、国際問題に関する政府の見解」を海外に伝え、国益に資することには興味がないようだ。

駐日アメリカ大使ラーム・エマニュエル氏は、どうしたら伝わるかについてNHKよりはるかによく理解しているようだ。彼は、処理水の放出後、さっそく福島まで出かけて地元の魚を食べて、その様子をX(旧ツイッター)で流した。この投稿は、処理水を海洋放出しても福島の海は安全であるということを強く印象付けただろう。