NHKの不祥事で引責辞任した理事がすぐに再雇用されていたことが分かった。メディアコンサルタントの境治さんは「NHKは反省してないし、二度と不祥事を起こさない覚悟もないとしか思えない。こんなおかしな対応をする背景には、NHKの苦しい事情があるのかもしれない」という――。
大阪NHK放送センタービル
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1週間で復職し、喜びに満ちていた元理事

9月26日、驚くべきニュースが飛び込んできた。「NHKラジオ問題で辞任の理事、1週間後にプロデューサーで再雇用」との毎日新聞のスクープだ。

筆者の元にも同じ日にこの情報が伝わってきた。NHK内部はこの話題でざわついているようだ。というのは、この元理事はメディア総局のエグゼクティブ・プロデューサーへの再雇用にあたり、NHK報道部門の人々を中心にメールを出していた。

最後は「もう一度仕事ができて嬉しい。」のような締め方で、再び職場に戻れる喜びに満ちている。いや、能天気に喜んでいる場合か? 重大な不祥事、しかも中国との国際関係にも影響しかねない一大事を引き起こした部門の責任者として辞任しながら、1週間後の復職の喜びを職員たちにメールするとは。

この事実は、まず元理事本人のモラル、常識がズレていることを示している。自分の担当する部門で起こった不祥事の責任を取って辞任した重大さがまったくわかってないと断言していいだろう。理事にまで昇進した人物がこんなおかしなモラルしか持てないとは、いったいNHKはどんな組織なのかと言いたくなる。メールを疑問視した職員が外部に漏らすリスクを考えなかったのだろうか。

公共放送のモラルが崩壊している

だが、本人よりもヤバいのがNHKという組織だ。

国民に信頼されるべき公共放送の組織の中で、モラルが崩壊していると言いたくなる。辞任した理事を再雇用するのは、最初から降格だったのと同じだ。ポーズとしての辞任でしかなく、国民の目を誤魔化したのだ。

国民に嘘をつくメディアが伝える事を、私たちは信じていいのだろうか。ひょっとしたらNHK上層部は、今回の国際放送での失態の重大さがわかってないのではないか。

ことの経緯を簡単に振り返っておこう。

まず8月19日、NHKのラジオ国際放送の中国語ニュースの中で、原稿を読んでいたスタッフが「尖閣列島は中国の領土だ」などと、中国の立場に立つような不適切発言をした。このスタッフはNHKの関連団体と業務委託契約を結んだ中国人で、2002年からこの業務に就いているという。