政治がNHK報道に介入する「穴」
心配なのは、政府につけ入る隙を与えたことだ。会長がわざわざ会合に出向いて謝罪したのに、あの謝罪はなんだったのか? 私が自民党議員でも怒ると思う。
政治家はスキあらばメディアを支配しようとするものだ。これは自民党でも野党でも実は変わらない。そして例えばイギリスの政権とBBCの関係に比べると、日本の政治とメディアの関係は隙だらけだ。イギリスには政府とBBCの間に第三者機関であるOfcomがある。他の国も似ていて、政府が直接放送業界を監督するのは日本ぐらいだ。
そんな中で政治的意味合いの強い分野で大ポカをしでかした。しかも辞任は建前だった。狡猾な政治家なら、何をしてくるかわからない。
今はたまたま自民党総裁が変わり、10月27日には解散総選挙という多忙なタイミングだからそれどころではないだろう。だが落ち着いたら、誰かが何かを言い出すのではないかという懸念を抱いてしまう。
「偽装辞任」を仕組んだのは誰か?
国民の反応はまだ薄い。総裁選と時期が重なっていて、この件はあまり大きく取り沙汰されていないせいだろう。だが気づいた人もすでに大勢いて、Xでは「#偽装辞任」というハッシュタグが回っている。言い得て妙だ。どう見ても、もともと復職させるつもりで辞任してくれと言われたのだろうから、辞任は強い反省に見せるための「偽装」だったとしか思えない。まあNHKはネットを軽視するので、気に留めてもないかもしれないが。
さらに、「偽装辞任」だとしたら、これは誰の差し金か。私でなくても詮索したくなるだろう。今回の処分は会長らの報酬自主返納と担当理事の辞任がセットになっている。会長ら上層部がすぐに復職させるから、と本人に言い含めて発表したのではないかと疑いたくなる。
あるいは、辞任までは本気だったが、現場の心優しい管理職が勝手に決めた可能性もある。しかし、もしそうなら、元理事は大喜びで職員にメールを出すだろうか? 組織として認められた復職だから、大手を振ってメールを出したのではないか?
権限が低い者では、元理事の復職なんて判断できないはずだ。その人の立場が危うくなる。ではどのレベルの管理職が決めたのか? NHKはそういったことも調査する必要があると私は思う。