医療界に根強く残る年功序列文化
大学病院や有名病院の多くは公立病院であり、令和になっても年功序列文化が強い。常勤医はめったにクビにはならず、管理職として決定権を持っているのは60~70代の高齢男性がほとんどだ。
高齢管理職医師は概して「若手はベテランの決定に従うべき」「最初の10年は24時間体制で滅私奉公すべき」という昭和的感覚から卒業しておらず、その結果「めんどくさい問題は若手に押し付ける」ことで職場内の諸問題を片づけたと錯覚しがちだ。
それでも昭和時代のように「外科や内科には、毎年10人以上の若手医師(しかも男性が大部分)が就職する」時代ならば、組織はピラミッド型となり、年功序列にモノを言わせて「雑用は若手」方式でも組織は回った。
しかしながら、近年の若手医師は自分の生活優先タイプが主流となり、かつてメジャー科と呼ばれて花形だった外科や内科は「拘束時間が長くコスパが悪い」と不人気科となり、新規就職者も減少の一途である。
加えて、女医率は上昇の一途であり、育休・育児時短は「当然の権利」となった。それ自体は問題ないが、同僚が育休や時短を取得しても患者数や仕事量は変わらない。育休時短職員の仕事の穴埋めは、同僚や後輩の無料奉仕でカバーされることが多く、特に若手男性医師は穴埋め要員とされやすい。
本病院のホームページを確認すると内科に女医は少なくないし、また内科の中だけでも「部長」「診療部長」「参事」「消化器センター長」「副院長」「院長代行」……と序列は不明だが管理職を想起させる肩書の医師が多い。「不人気内科の少ない若手」「多い管理職」「増える女医率」のような環境で、「内科には毎年10人就職」だった昭和的感覚の管理職が数少ない若手医師にバンバン仕事を回せば、若手医師はメンタルを病んでしまっても不思議はない。
大手美容外科就職者数が東大病院を上回る
内科外科の不人気と表裏を成して、美容医療への就職が大人気である。美容外科を全国展開するTCB東京中央美容外科の2022年医師採用実績は119人だったそうで、大学病院研修医採用数ベスト3の東大病院(97人)、東京医科歯科大(94人)、京大(75人)を超える時代となった。
「初年度平均年俸2500万円」とうわさされる一方で「コロナ前は3000万円だったのに」「1年で3割が雇止め」とささやかれる厳しい世界であるが、若手医師の就職は増加の一途である。
美容外科の魅力は高年収もさることながら、「報酬や職務内容(ジョブ)を明確に定義して職務記述書を締結する」という医療界ではまだまだ少数派のジョブ型雇用にあると思う。