来年以降も追加の値上げリスクがある

1.Amazonプライムはこれからも値上げが続くのか?

Amazonプライムはこれから先も、さらに値上げが続くのでしょうか? 私は以下の理由からAmazonプライムには来年以降、追加の値上げリスクがあると考えます。

今回の値上げの要因のひとつが物流業界の2024年問題です。物流に関わる従業員の残業規制が強化されることで、業界全体に人手が不足すると見込まれています。

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「アマゾンの場合は宅配を個人事業主に頼んでいる例も多いので、2024年問題は関係ないんじゃないの?」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。法律上は個人事業主は自分が雇い主なのでどれだけ過重労働をしても法律の抜け穴になるという指摘があります。一方でアマゾンの宅配をする自動車の事故も社会問題となっています。

この点については物流業界の働き方改革の観点では脱法行為として捉えられるでしょう。同時に物流以外の業界でも個人事業主という契約を悪用した過重労働について問題になっています。

そのため、個人事業であっても労働についての規制は来年以降間違いなく強まるでしょう。基本的にはアマゾンも2024年問題の影響を受けることになり、その観点から今回値上げが行われたというのがひとつめの側面です。

値上げすればアマゾンの利用者はさらに増える

一方でこれは逆説的な現象になるのですが、値上げ後はアマゾンの利用者がさらに増えるでしょう。コロナ禍による引き籠りや夏の酷暑の際に外出を控えるといった事情から、ここのところインターネット通販の需要が急増しています。

問題はそこにAmazonプライムの値上げが加わることで、消費者心理的には、

「年会費を払っているのだから元をとるためにもっとアマゾンを使おう」

という行動が起きることです。結果、来年の今ごろは今年よりもさらにアマゾンの配送網は忙しい状況になっているはずです。

とはいえAmazonプライムの配送料無料はグローバルに提供している人気コンテンツです。であるがゆえに「それを止める」という決断は日本では難しいでしょう。そうなるとやれることは年会費を上げて少しでも配送問題を緩和するという考えです。

配送キャパシティのひっ迫がどうしようもないほどの大問題になる状況が発生すれば、プライムの会費をとんでもない価格にまで値上げすることすら起こりえます。会員数を減らすのが解決策になるからです。このように物流にこれから起きる問題を念頭におくと、プライムの値上げはこの先も続く可能性が予測されるのです。