アマゾン以外のサービスもどんどん高くなる
3.他のサブスクはどうなるのか?
アマゾン以外のサブスクがどうなるかというと、基本的にはこの先、どのサービスもどんどん高くなると考えたほうがいいと思います。理由はインフレに伴う日本の賃金上昇です。コストが上がればどの企業もそれを値上げで取り戻したいと考えます。
その際に、普通の売り方であれば値上げは販売減につながるため、多くの経営陣が悩みに悩み抜きます。
ところがサブスクは普通の売り方と違って、値上げをしても値上げ幅ほどは売上数量が減らない傾向があります。そうなる理由は販売後に消費者がそのサブスクのサービスにロックインされるからです。
ではどのようなサブスクサービスが値上げされやすいのでしょうか? 値上げは「これ以上会員数が増えるのは難しいな」と考えるサービスから行われる傾向があります。
たとえば今年2月にスポーツ分野の動画配信大手のDAZNが月額料金を3000円から3700円に値上げしました。実はその1年前の2022年2月に1925円から3000円へと大幅に値上げしたばかりのことでした。わずか2年でほぼ倍に値上げをしたことになります。
このような値上げでは新規の顧客獲得は難しくなります。それでも新規の顧客獲得がもう難しいところまで来たと経営陣が考えた場合には、利益を増やすには値上げが一番役に立つのです。
ネットフリックスが「実質値下げ」をした背景
一方でまだ会員数が増えると経営陣が考えている場合は、値上げ幅はマイルドになります。2015年に950円だったネットフリックスのスタンダードプランはその後、何度かの値上げを繰り返して1490円にまで値上がりしました。
ところがこの段階で世界的にネットフリックスの会員数が頭打ちになるという現象がおきました。まだ会員数は拡大できる余地が大きいと考えた経営陣は実質値下げを行いました。それは990円のベーシックプランの画質を上げて実質的にスタンダードプランと内容が大きく変わらなくしたことと、その下に790円の広告付プランを導入したことです。
これらの事例から見れば、動画配信にせよ、ゲームにせよ、音楽にせよ、アプリにせよ、この先会員数がまだまだ増える激戦区ではサブスクは据え置きないしは実質値下げに、そしてもう会員数が増えない状況では値上げに向かいます。そして業界全体で見ればインフレと賃金上昇でサブスク価格の平均値は値上げ方向に動きます。
さて今回のAmazonプライムの値上げのニュースについて、このように値上げのメカニズムをまとめてみました。便利なサービスですからなるべく値上げしてほしくはないところですが、経済環境的には仕方のない事情がたくさんあるわけです。しばらくは日本全体で我慢が必要な局面が続きそうです。