40歳を過ぎたプレ更年期に一気に問題が噴出する
エネルギー不足の気虚女性たちは、20~30代の若い間は、実生活のなかで生理の不調に悩みつつも、「疲れやすい」程度でしのげるかもしれません。ところが、40歳を過ぎたあたりで「プレ更年期」を迎えると、一気に問題が噴出するケースが非常に多いのが、気虚女性の特徴です。日本の気虚女性たちは、見た目はさほど衰えていなくても、更年期の前後に精神的なパワーの衰えが一気に加速する傾向が見られます。
そのため、40歳を過ぎたあたりから、落ち込みや不安、無気力に陥ったり、感情のコントロールが利かなくなるといった、メンタルの不調を抱える人が急に増えてくるのです。
先日相談を受けた独身女性もまた、その1人でした。大手企業に勤めていた彼女は、45歳になるまで仕事一筋で頑張ってきましたが、40歳を過ぎたころから気持ちの落ち込みがひどくなり、心療内科で「うつ病」と診断されました。
肩を落とした彼女から「仕事を辞めたい」と打ち明けられた女性上司が、「とても優秀な人なので辞められたら困る! 先生、元気にしてあげてください」と、以前から付き合いのあった私のところへ連れてきたのです。
話をうかがったところ、生理の周期はまだ正常でしたが、漢方的には精神的な老化が始まっている状態にあるとわかりました。舌を診せてもらったところ、やはり気虚の現れである歯形がくっきりとついており、腫れぼったくなってぽってりとしています。疲れやすく、気持ちが落ち込みやすい人の特徴がそのまま、舌にも現れていました。
心の老化が先にやってきた
漢方では、生理は「体」と「精神」の2段構えになっていると考えます。生理は心身両面に対して相互に影響するものである、ということです。「生理不順」や「生理痛」といった形で体に不調が現れることもあれば、「PMS(月経前症候群)」「PMDD(月経前不快気分障害)」といった形で心に不調が出るケースもあります。
ご相談者の女性の場合、プレ更年期を迎えて心の老化が先にやってきたために、情緒不安定に陥ったというわけです。そのため、心療内科で受けた薬物治療も、うまく効果が現れなかったのだと予想されました。
私はひとまず、休職期間の残り3カ月の間に、漢方的な治療を試してみることを提案しました。「3カ月後の体の調子を見て、また仕事のことを考えましょう。これまで頑張ってきたのにあっさり辞めてはもったいないですから。体がよくなれば、きっとまた輝けますよ」とお伝えしたのです。そして、足りなくなった気を補ったり、老化を緩やかにしたりする漢方薬を選択すると同時に、気虚のための養生方法をお伝えしました。
生来、真面目な気性のその女性は、薬を欠かさず飲むことはもちろん、生活改善も確実に実行したようで、3カ月後には女性上司から、「彼女、問題なく復職できました! ありがとうございました!」と、うれしい連絡が入りました。