日本の地球温暖化対策が進まない原因
「パリ協定」を受けて、日本は、2030年度に2013年度比でGHGの排出量を26%減らすことを表明した。続いて、2018年に「気候変動適応法」を成立させた。この法律では、GHGの排出削減に加えて、気候変動による被害(自然災害・熱中症・農作物への影響など)の回避・軽減を図ることが明記された。
こうして、2020年、「2050年カーボンニュートラル」が菅前首相により宣言され、2021年にはカーボンニュートラルに向け「GHGを2030年度までに2013年度比で46%削減する。さらに50%の高みに向け挑戦を続ける」という、目標が表明されたのである。
しかしこれら一連の宣言と法案強化は、今日まで、実際の行動に結びついていない。とくに、安倍政権においては、首相が地球温暖化否定論者のトランプ大統領(当時)にべったりだったこともあって、地球温暖化対策は進まなかった。
日本の地球温暖化対策が進まない原因として、もう一つ挙げておきたいのが、メディアの怠慢である。日本のメディアは、地球温暖化に対する危機意識が欠如している。たとえば、「COP」が紛糾すると、それを大々的に報道し、「化石賞」などという本線でないことを大きく取り上げ、なぜ紛糾しているかという本質的な問題を真剣に取り上げない。
脱炭素できない国は世界に置いていかれる
地球温暖化を止めることは、じつは経済対策であり、今後の国のあり方、国民生活に大きな影響を与えるという視点がない。日本の対策が周回遅れになっていることに対して、政府や業界関係者に取材すると、「日本には日本の事情がある」という答えがおしなべて返ってくる。
そのため、2030年度までに旧式火力の100基を廃止するとした計画が頓挫し、廃止が2カ所にとどまることになったが、メディアはこれを正面から批判しない。これでは、地球温暖化対策を促進すべきという世論形成ができるはずがない。
岸田政権は誰一人として理解できない「新しい資本主義」を掲げたが、そのなかに地球温暖化対策は組み込まれなかった。
脱炭素化が進展し、それに基づく新たなルールが形成されれば、脱炭素を実現できない経済は置いていかれることになる。それがわかっているなら、痛みをともなう再エネ転換でも早いに越したことはない。
脱炭素競争から脱落すれば、日本企業は多くのビジネスチャンスを失うだろう。そして、私たちの暮らしは気候変動リスクに晒されながら、経済的にもよりいっそう厳しいものになっていくだろう。