日本の太陽光発電コストはヨーロッパの2倍近い
現在、太陽光などの再エネが進展しない原因の一つに、発電コストが高いことが挙げられている。太陽光システムの発電コスト(工事費やモジュールを含む)を比較すると、欧州が15.5円/kWに対し、日本は28.9円/kWとなっていて、2倍近くの開きがある。
そのため、「固定価格買取制度」で政府は、買取価格を高く設定した。そうすれば、太陽光事業者はコスト削減せずとも利益を出せると考えたのだ。
しかし、過度の補助金というのは、逆効果になることもある。日本の場合は、それを目当てに玉石混交の業者が参入し、かえって価格競争力を弱めてしまった。さらに、質の悪い“悪徳業者”の存在が、再エネ業界全体の信用低下を招き、行政に対する信頼までも失わせてしまった。
ほかにも原因はいくつか挙げられるが、根本的に日本政府の政策には、再エネへの“やる気”が感じられない。たとえば、2018年に策定された「第5次エネルギー基本計画」の序文は次のようになっていた。
「現状において、太陽光や風力など変動する再生可能エネルギーはディマンドコントロール、揚水、火力等を用いた調整が必要であり、それだけでの完全な脱炭素化は難しい」
中国製太陽光パネルなしには発電ができない
「難しい」と言ってしまっては、「それならなぜやるのか」となってしまう。明らかに再エネへのインセンティブを削いでいる。
こうしていまや太陽光発電は中国に完全に追い抜かれ、太陽光パネル生産においては、日本企業はトップ10にも入らなくなった。
世界の太陽光パネル生産メーカートップ10(2022年)のうち、8位のファーストソーラー(アメリカ)、9位のハンファQセルズ(韓国)以外の8社は、すべて中国企業である。5位のカナディアンソーラーは、本社がカナダで登記されているが、主力工場は中国にあり、経営者も中国系なので、実質的には中国企業である。
この結果、太陽光パネルにおける中国のシェアは95%にまで達し、もはや中国製太陽光パネルなしには太陽光発電ができなくなってしまった。
2022年12月、東京都は、小池百合子知事の念願である「新築戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化」の条例を成立させた。となると、中国製パネルを使うことになるので、懸念する声が上がっているが、もはや手遅れである。
太陽光ばかりではない、風力においても、中国にシェアを奪われ、もはや日本勢の存在感はない。風力発電メーカーのシェアを見ると、ヴェスタス(デンマーク)、GE(アメリカ)以外の上位企業は、ほとんどが中国企業である。