市場規模は5年間で1.8倍に

作品の評価だけではない。ジェトロの報告書「中国のアニメに関する市場調査 2022年度更新版」によると、キャラクタービジネスなども含めたマンガ・アニメ産業は2021年に2420億元(約4兆7000億円)を記録したという。

2016年から1.8倍という猛烈な成長ぶりだ。絶好調の日本アニメだが、その産業市場規模は2兆7422億円である(2021年、日本動画協会「アニメ産業レポート2022 サマリー版」)。統計基準が異なるとはいえ、中国の市場規模には改めて驚かされる。

アニメ作品のクオリティーが上がり、その影響で市場規模が拡大し、新たな投資を呼び込んでさらにクオリティーがアップする……こうした正の循環が続けば、中国のアニメはすさまじい勢いで飛躍していくのではないか。

この5年間でかつての勢いは失われつつある

「表向きは好調に見えますが、5~6年前と比べると停滞しています」

中国アニメ業界関係者に話を聞くと、意外な答えが返ってきた。2010年代中盤からの中国アニメ・ビジネスの急成長を支えたのは動画配信サイトだった。大手検索サイト・バイドゥ系の愛奇芸(アイチーイー)、EC(電子商取引)大手アリババグループ系の優酷土豆(ヨークトゥードウ)、ゲーム・メッセージアプリ大手テンセントのテンセント・ビデオ、アニメファンに強いビリビリ動画などの配信サイトがしのぎを削っていた。

アニメは映画、ドラマ、バラエティーと並ぶ有力コンテンツという位置づけで、他社との差別化を図るためにアニメ作品の配信権購入に巨額の資金を投入したほか、アニメ制作会社への出資の動きも広がっていた。

このチャイナマネーの恩恵を受けたのが日本だ。「アニメ産業レポート2017 サマリー版」(日本動画協会)では、次のようにその衝撃が描かれている。

産業界の話題となっていたのが中国ビジネス。3〜4年前からの中国における大手プラットフォームのための日本アニメ爆買いからはじまり、2016年には日本製アニメの製作委員会への投資、さらには自らの企画・製作のIPを日本のアニメスタジオへ制作発注するまでになった。2015年からは中国での日本製アニメ上映も解放され、その経済的波及力が年々高まることで海外市場急伸の大きな原動力となっているのである

ところが最新版である2022年版では中国についての景気のいい話はすっかり消えてしまっている。同報告書に掲載されている、日本アニメの国別海外契約数を見ると、2017年版では中国の契約数は355件と世界一だが、2022年版では199件の世界3位にまで後退している。足元の今年はさらに契約件数は減少しているもようだ。

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