米国との覇権争いにも陰りが

今年1月に“ゼロコロナ政策”を終了して以降も、中国経済の回復は期待されたほど進んでいない。むしろ、中国の景気が本格的に回復するには時間がかかりそうだ。そうした状況を反映して、中国の株式、債券、人民元が売り込まれトリプル安の様相を呈している。中国経済が米国を抜いてトップの座に就くとの期待も後退気味だ。

中国経済の中で不動産関連分野は約3割を占める。その不動産の市況に低迷はかなり重要だ。リーマンショック後、共産党政権は不動産投資を増やし高い経済成長を実現した。現在、その成長ビジネスが限界を迎えている。足許で不動産投資の減少は鮮明だ。中国は高度成長期の終焉しゅうえんを迎えつつある。

共産党政権は、その状況に懸念を強めている。6月19日、習近平国家主席は、ブリンケン米国務長官と会談した。経済面から考えると、対米輸出を増やす狙いがある。一方、不動産や地方政府の債務問題は深刻化している。共産党政権は景気対策を強化するだろうが、景気の持ち直しは簡単には進まないだろう。

2023年6月19日、ブリンケン氏(左)と握手する習近平氏
写真=中国通信/時事通信フォト
2023年6月19日、ブリンケン氏(左)と握手する習近平氏

マンション建設が資材、建機、雇用を支えてきたが…

中国の不動産分野の回復は鈍い。2023年1~5月の不動産の開発投資は、前年同期比7.2%減少した。マンションなどの建設が増えないことには、中国の景気が上向くことは難しい。

リーマンショック後、地方の政府は、不動産デベロッパーに土地の利用権を売却した。また、米国など主要先進国の金融政策は緩和された。世界全体で、超低金利の環境が長く続くとの期待は高まった。中国国内では、共産党政権がマンションなどの建設を増やし、価格は上昇し続けると過度な成長の期待が盛り上がった。

不動産業者はマンションなどの住宅を急速に増やした。土地の利用権を売却することによって、地方政府は財源を確保した。得られた資金は、空港、道路、高速鉄道などのインフラ建設(投資)に回った。

インフラ投資、マンション建設の増加は、生産活動を押し上げた。鉄鋼、銅線、ガラス、コンクリートなどの基礎資材、ショベルカーなどの建機、自動車や白物家電などの耐久財の生産能力が増強された。雇用の機会も増え、個人消費も支えられた。