ピーク時でもさばけるように製造キャパシティを倍増した

――一般的なモバイルオーダーは時間指定型が多いですね。マクドナルドは違います。

【藤本】時間指定型にするのは、ご注文をいただいてからすぐに商品をご提供できる体制がないか、あるいは他に何か狙いがある場合でしょう。マクドナルドはすぐに商品をご提供できる体制があるので、注文を時間指定で予約する方式にはしませんでした。

お客様はオーダーしたらすぐ食べたいですよね。そのニーズにお応えしています。

もちろん、課題もありました。新しい注文方式が増えると、キッチンの機器やクルーの負荷が増えることはたしかです。ただ、モバイルオーダーの導入と同時に店内設備のアップグレードを進めてきました。

たとえば、商品を受け取るカウンターの上で番号を表示する「オーダーメニューボード」というモニターはその一つです。これがなければ複雑化するオペレーションに対応できなかったかもしれません。

撮影=プレジデントオンライン編集部
商品カウンター上の「オーダーメニューボード」。モバイルオーダーの注文分はMから始まる番号で表示される。

キッチンの製造設備もアップグレードしています。

従来から2レーンで調理して受取口まで運ぶ厨房機器はあったのですが、2016年にベルトコンベアを導入、4レーンに倍増された新型の厨房機器が開発されました。

モバイルオーダー導入やデリバリー強化によるピーク時の注文量の増加に向けて、大きな店舗を中心にこの機器の導入を進めて製造キャパシティを増やす準備をしていましたし、新店は開店時から導入できるような設計にしています。

全国3000店舗で一気に導入できた理由

――フランチャイズ店舗が大半ですよね。一気に導入するというのは大変そうです。

【藤本】マクドナルドは全国あわせて約3000の店舗があります。このうち、7割がフランチャイズ店です。モニターや新しい厨房機器への投資にはお金がかかりますし、導入したくてもスペースに制限がある店舗など、状況はさまざまですので、一気に導入はできません。

ただ、普段からフランチャイズオーナーのみなさんとコミュニケーションする機会は多く、今回の未来型店舗体験に関しても、モバイルオーダーや厨房機器のメリットはもちろん、将来のビジョンを含めてオーナーのみなさんに一つひとつ丁寧に説明させていただき、数年かけて実現しました。

撮影=プレジデントオンライン編集部
クルーの頭上にも注文を表示するモニターが設置されている

もともとアプリがあったことも大きいですね。2018年ごろで、マクドナルド公式アプリのMAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)は1700万人いました。すでに強いお客様の母体があったので、それを活用してさらに良いサービスを展開していけたことも導入のスピードを後押ししました。