金融正常化で日本経済を再び成長軌道に
さらには成長が30年以上停滞している日本経済の活性化にも金融政策の正常化は役立ちます。今年1~3月の名目国内総生産が572兆円と、以前よりは改善していますが、ここにも落とし穴があります。ドルで換算した場合には、円安が進んでいることもあり、4兆ドル程度でしかないのです。
2010年に中国が日本を抜いた時には両国とも5兆ドル程度でした。ドルベースでみた場合は、このところはむしろ名目国内総生産は減少しているのです。
名目国内総生産は企業などが生み出す付加価値の合計で、いわばこの国の「稼ぎ」です。その稼ぎが減っているのです。エネルギー輸入の大部分をドル建てで行っている日本経済ですから、ドルベースでの稼ぎの減少は死活問題です。
この国の経済が長らく成長しない理由は、人口減少などさまざまあるでしょうが、企業の新陳代謝が悪いことも大きな原因だと考えられます。欧米では10%程度ある企業の開業率・廃業率がこの国では5%程度しかありません。政府が安易に補助を出すこと、また金利が極端に低いことがゾンビ企業を多く生んでいるのです。同じ補助を出すなら、ゾンビ企業のM&Aを促す、そこで働く従業員の再教育などにお金を使うべきでしょう。
いずれにしても、金利が上昇することで、企業の新陳代謝が活発になります。
選挙に配慮して、正常化をためらうようなことがあれば、政治におもねって日銀の機能を使い果たしてしまった黒田東彦総裁(2013~2023年)の時代と同じです。植田和男日銀総裁は、勇気をもって金融を正常化させてほしいものです。