どんな属性の人がカスハラしやすいのか

この4タイプを知ると、カスハラ事例の加害者たちの心がうっすら見えてくるのではないだろうか。土下座強要カスハラ、知人女性のためにわざわざ首を突っ込む男性のカスハラ、マスク警察……その心理が読めてくるはずだ。

このような攻撃性のパーソナリティ分析に加えて、「どんな人がカスハラをしやすいのか」も調べる必要がある。

性格の特性とクレームの態度の関係を調べた社会心理学の研究結果によれば、自尊感情が高い人ほど、また、自分の情動を自分で調整できると思っている人ほど、クレームしやすい(肯定的な態度を持つ)傾向があった。こうした研究をさらに積み重ねる必要がある。

そこで私は、2020年に科研費を得て、今度はカスハラ加害に関するWEB調査をおこなった。今回は前回のWEB調査の10倍に近い2060名(女性1096名、男性964名)の回答者を得た。

約半数がカスハラ加害の経験ありというショッキングな回答

この調査は、回答者自身のカスハラ加害の経験を尋ねるもので、自身が過去にしたもっとも印象に残っている悪質なクレームについて答えてもらった。じつを言うと、この調査をやる前は「正直に答える人はいないのでは?」と周りからも言われていた。「クレーマーですか?」と聞かれて頷くのは自分自身に嫌なレッテルを貼るようにも感じられて、正直に答えるのに抵抗感があるかもしれない。善人ぶるとまではいかなくても、無自覚だったり、嫌な思い出として忘れていたりするかもしれない。

しかし、驚きの結果が出た。全体の45%に相当する924人が、悪質なクレームをしたことがあると答えたのだ。約半数がカスハラをしたことになる。「淡々と静かに話した」(629人)が最多だったが、「攻撃的な話し方や言葉があった」と答えた人も71人、「大声を上げる時があった」が63人、「お店や担当者に対し罵詈ばり雑言があった」も11人いて、かなり正直に自己申告してくれた。

この回答をもとに、特性に応じて違いがあるかも確かめてみる。ここでは「性別」「年齢」「職業」「世帯年収」によってカスハラ加害に関する違いがあるのかを見てみよう。

性別

「カスハラ加害をした」と答えた人たちの性別については、女性445名、男性479名と、あまり差は見られなかった。だが、カスハラの内容については、やはり性差が見られた。男性では、45歳以上が店員のミスや手続き不備などを理由に、高圧的な態度をとり、上層部からの謝罪を受けるタイプが多かった。それに対して女性はというと、45歳未満が商品の欠陥を理由として、店員に対して淡々とクレームを述べ、商品や商品代を受けとるタイプが多い。攻撃性は男性の方が高く、年齢層も上がる。

写真=iStock.com/Jonathan Austin Daniels
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