アイドルや歌手、キャラクターなど自分の「推し」を応援する人が増えている。福厳寺住職でYouTuberの大愚元勝さんは「推し活がエスカレートして他人に依存しすぎてしまうのは危険だ。金銭的にも精神的にも疲弊してしまっている人に、お釈迦さまの言葉を届けたい」という――。
「推し活」の広まりに嫌な予感…
初めて「推し活」という言葉を知ったのは、相談者の手紙からだった。
私は10年ほど前から、YouTubeで「大愚和尚の一問一答」という悩み相談番組を配信している。そこに寄せられた15歳の女子高生からの相談の中に、「私には誰も{推し}がいないのですが、こんな私はおかしいのでしょうか」というものがあったのだ。
「新型プリウス」を意識した瞬間に、やたらあちこちで新型プリウスを見るように、何かを認識した途端に自然とその情報が目につくようになる現象を「バーダー・マインホフ現象」と呼ぶそうだが、まさにその通り。
「推し活」という言葉を知ってからというもの、手にとって眺めた新聞や雑誌などの記事文中に、やたらと「推し活」という言葉が目につくようになった。また、「一問一答」にも、先の15歳女子高生からの相談と類似した相談が次々と届くため、「推し活」なる言葉の定義や、それが使われるようになった歴史をネットで調べてみることにした。
そして、「推し活」について何となく感じていた、嫌な予感が的中していることを知った。
もともとはアイドルオタク界隈の俗語
ネット上で調べていくうちに、株式会社ニッセイ基礎研究所、生活研究部研究員の廣瀬涼氏が書いた「推し活を知る」と題する記事を見つけた。
廣瀬氏によれば、推しとは「ほかの人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物」だという。
「推し」は、1980年代ごろからアイドルオタク界隈で発祥した俗語とされており、「推し活」は「推し」から派生した言葉だそうだ。1995年に産経新聞で「就活」という言葉が使われ、2000年版の『現代用語の基礎知識』(自由国民社)に採用されて以降、「婚活」、「朝活」など、○○活という言葉が世の中に定着してゆく。