店舗の従業員や病院や役所の受付に悪質なクレームをつけるカスタマーハラスメント(カスハラ)。加害者の心理について研究する桐生正幸さんは「心理学的に見ると、カスハラをする人の攻撃性には4つのパターンがある。さらに、アンケート調査をして年齢や性別、職業や年収でカスハラしがちな属性がわかってきた」という――。

※本稿は、桐生正幸『カスハラの犯罪心理学』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。

他人を攻撃する人には4つの行動パターンがある

攻撃性の4タイプについて、それぞれの特徴を見てみよう。

「回避・防衛」としての攻撃

この攻撃行動をとる人は、「自分が危害を加えられている」という被害意識を持つ傾向が強い。心理的側面としては「猜疑心さいぎしん」や「被差別感」といった人格特性があり、負の情動などを持ちやすいことが指摘されている。

「私が危ない目に遭ったのは、あいつの悪意のせいだ」「私が損をしたのは、あいつの敵意のせいだ」というように、自分が危害や損失を受けた原因を相手の悪意や敵意のせいにすることで、このタイプの攻撃行動は高まる。

怒りや恐怖といった強い情動が、行動の表出を加速させるのだ。

「影響・強制」としての攻撃

この手の攻撃で典型的なのは、自分の意見を通すために戦略的に攻撃行動を使う人だ。

心理的側面としては「自己主張」「競争心」「支配性」などが強いことが指摘される。自分の利益にこだわる人、妥協などを嫌う人が、他人と対立した際、自分の要求を押し通すためにこの攻撃行動を使うことが多いと考えられている。

また、人間関係で自分が相手よりも優位に立てるときにも、このタイプの攻撃行動は起こりやすい。たとえば、相手よりも地位が高かったり、権力や財力があったりするケースだ。ただし、もともと感情表現や言葉選びが苦手な人の場合は注意が必要だ。悪気はないけれど言葉足らずなせいでぶっきらぼうな言動になってしまっているだけで、相手を攻撃していないことがあるからだ。

指を突き出す人
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「自分は正義」「やられたらやり返す」と考える人たち

「制裁・報復」としての攻撃

「自分が正義」「責任は相手にある」と信じる傾向の強い人がとる攻撃タイプだ。心理的側面としては「偏った信念」「融通性に欠ける」「やられたらやり返す」「執拗しつように思いつづける」といったことが指摘される。法律や社会的ルールとその人個人のルールがごっちゃになっていて、違反する人を制裁し復讐したいという思いから攻撃行動をとる。

「同一性・自己呈示」としての攻撃

文字どおり、体面やプライドへのこだわりが強い人、たくさん注目されたい人がとる攻撃タイプだ。心理的側面としては「名誉や信用を守る」「自分のイメージをよくする」といったことが指摘される。たとえば、「男らしさ」をもって周りからかっこいいと思われていたい人が、「男らしくない」と思われた際、その敬意やイメージが揺らいでしまう。それに敏感に反応して、勇敢さや優越性を示すために攻撃する。あるいは、他人が自分をどんなふうに見ているのか想像し、そのイメージをよくしたいと思ってこの攻撃行動を使う。