権力者たちの趣味が反映されていた

そんなわけで古代芸術では、小さな一物を持つ英雄は文化的スノッブ性を体現する存在だった。古代ギリシアの思想では、セックスとはすなわち生殖行為であり、サイズは僕たちが考えるのとは逆の意味で重視された。小さいペニスのほうが、卵子に達するまでに精子が冷えすぎないため受胎に適している、とアリストテレスは主張した。

高名な古典学者ケネス・ドーヴァー卿は大きな反響があった1978年の著書で、生殖行為は人口維持のためにこそ重要だったものの、古代ギリシア人にとっての理想の性愛は、夫婦間ではなく、成熟した強い男と受け身の十代の少年の間に存在したと強く主張している(『古代ギリシアの同性愛』青土社、2007年)。

僕たちにはショッキングなことだが、これはつまり、古代ギリシアの公共の場に飾られた彫刻作品は、しばしば芸術のパトロンとなった年長の権力者たちの趣味を反映していたということだ。そして彼らが好んだのは、まるで腰回りに巨大なヘビを抱えているかのようなプリアポスではなく、ほっそりしてしなやかな、体毛がなくペニスの小さな少年たちだった。

古代ローマにもあった「下品な落書き」

ここまで書いたところで古代ローマに戻ると、当時の壁には男根の絵の落書きが数多く見られた。現代の少年たちによるトイレの壁の落書きと同じようなものだ。そして、非常に下品な言葉に対する心の準備をしていただきたいが、ポンペイで発見された落書きのなかには次のようなものがあった。

「フォルトゥナトゥスは君をとても深く貫く。アントゥサよ、来て見てごらん」。これはある女が女友達にあてた推薦文かもしれないし、フォルトゥナトゥス本人が書いた、古代版の深夜の卑猥メッセージかもしれない。ほかにも「愛しいフォルトゥナトゥス、性交の達人、経験者が書いた」というのもある。

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これまた推薦文みたいだが、もしかしたらフォルトゥナトゥス本人が書いたのかもしれないと思うと、笑わずにはいられない。おもしろいか否かはともかくとして、こんな下品な自慢は、ペニスが単なる美的要素というだけではなかったことを示している。

ここではローマ人は男根を、女に快楽を与える生殖器官としてとらえている。理想化された彫像について先に述べたことは別として、この点をもう少し深く追う必要がありそうだ。なぜならときにはサイズは重要であり、それも僕たちがおもしろがるような、通常の意味でそうだったからだ。