美術展をより深く楽しむにはどうすればいいか。ちいさな美術館の学芸員さんは「頭から順番に解説パネルを読みながら見て歩く必要はない。まずは最初に会場全体を一周して、気になったものを見ていくほうが満足度は上がる」という――。
※本稿は、ちいさな美術館の学芸員『学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。
すべての作品に解説パネルをつけるべきか
展覧会を作り上げる中で学芸員は、作品をどのように並べ、そこにどんなキャプションやパネルを付けるのかを検討します。そこで常に頭を悩ませることがあります。
作品の横に詳細な解説パネルを設置するとします。すると、どうなるか。たいていのお客さんは作品そのものよりもまず解説文を読んでしまうんです。で、その解説に書いてある作品の見方、解釈を「正解」ととらえて、作品鑑賞自体はその答え合わせになってしまう。みなさんも心当たりがありませんか?
なので、展覧会を作り上げる時に、なんでもかんでも解説を付けることには抵抗があります。一つの正解を教える学校の授業じゃないんだから、と。
それに言葉で説明できないからこそ、アートという形にする必要があったわけです、作者は。それを言葉にしちゃうのって、はっきり言って野暮じゃないですか。ちょっと違う気もしますが、お笑いを見た後にそのネタがどうして面白いかを解説する、みたいな不自然さを感じてしまうわけです。