ポイントは集中力に緩急をつけること

ぐるっと一通り展覧会を見てみると、いろいろなことが分かります。

まず展覧会全体の構成が分かります。「作家の人生に沿って作品を並べているんだな」とか「細かく章立てしているんだな」とか「メイン展示は半分ぐらいまでで、後半は関連展示なんだな」とか、どんなストーリーで展覧会が構成されているのか、企画側の意図がなんとなく理解できます。そして自分が最も気になる作品や気になるエリアが見つかるはずです。

それらを踏まえた上で、あらためて最初から見ていきましょう。

ポイントは集中力に緩急をつけること。全体の構成が頭に入っているので、あまり興味がわかないところでは無理して気合いを入れすぎず、そのかわり琴線に触れそうな作品のところではじっくり集中して鑑賞するのです。

これだけで鑑賞が終わった時の満足感がだいぶ変わりますし、自分なりの発見や気づきを得る確率がぐんと高まります。だまされたと思ってやってみてください。

アート
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
※写真はイメージです

音声ガイドを外してもう一度見てみる

最近はスマホのアプリと連動させて利用できる無料の音声ガイドも増えてきました。あ、この音声ガイドですが、学芸員が原稿を作る場合もありますし、図録の作品解説などをもとに外注業者が作る場合もあります。

展覧会でこうしたものを利用してみるのももちろんおすすめなのですが、できればこれも音声ガイド付きで鑑賞した後に、ぜひイヤホンを外してもう一度自分なりの見方で会場を一周してほしいです。

もう一つ、さらに上級編としておすすめなのが「メモを取りながら鑑賞する」ことです。あくまで上級編なので、万人におすすめするわけではないのですが、一歩踏み込んだ鑑賞体験をお望みなら試してみる価値があります。

きれいな絵を見て「あー眼福、眼福」で満足するのも良いのですが、美術鑑賞の醍醐味は、作品とじっくり向き合うことで、自分の中の価値観だったり常識だったり固定観念だったり、そんなものが破壊されるとまでは言いませんが、少しぐらついたり、揺らいだりするところにあると私は思います。それが現代アートであれ、古美術であれ、展覧会を「見る前の自分」と「見た後の自分」は、同じではないのです。

そんな体験を後押ししてくれるのが、鑑賞メモです。