展示の入り口のあいさつ文は斜め読みで大丈夫

さて、ではそろそろ具体的な鑑賞方法について説明しましょう。

もちろん展覧会の鑑賞方法に決まりなんてないので、それぞれが好きに見ればいいのですが、「せっかく展覧会に行ったのにあまり楽しめなかった」という人のために少しだけヒントになりそうなことを。

生真面目な日本人の多くは、次のような固定観念をもっています。

・入り口のあいさつ文をちゃんと読んで、展覧会の趣旨を理解しなくてはいけない。
・解説文はすべてしっかり読まなくてはいけない。
・順路に従って作品を順番通りに見なくてはいけない。

展覧会に行くと、たいてい展示室の最初に人だかりができていて「うわ、混雑してるな」と思いませんか。これは、多くの人が最初にパネルやバナーで表示されたあいさつ文を一言一句ちゃんと読もうとしているからです。

いや、学芸員としてはありがたいんですよ。あいさつ文を書くのも学芸員の仕事ですから、それを読み飛ばさずにじっくり立ち止まってくれるなんて。

でも、あえて言います。そのあたりは斜め読みで大丈夫です。

なぜそんなことを言うかというと、人間の集中力には限界があるからです。

まずは会場全体をぐるっと回ってみる

展示室に入って最初のエリアは渋滞しがちですが、出口近くになると結構ガラガラになっている光景にはみなさん見覚えがあると思います。

会場が一部屋だけのミニ展示ならまだしも、ある程度の規模の企画展となると、鑑賞者が気合いを入れて最初から作品一点一点を解説文もじっくり読みながら見ていくと、普通は後半で集中力がもたなくなり、だんだん適当に見るようになります。その結果終盤になるほど人がまばらになるのです。

こうした事態を避けるために、私がおすすめする鑑賞方法が「まずはぐるっと会場を最後まで回ってみる」です。

解説をいちいち読んだりしません。人でにぎわっているエリアは後ろの方からのぞいて見るだけでもいいでしょう。会場の構造上、行ったり来たりが難しい展覧会もたまにはありますが、普通は最後まで行っても退室さえしなければ、順路を逆流することも自由です(退室してもチケットを見せれば再入室できる施設もありますね)。まぁ友達と一緒に来た時などはこの技は使えませんが。