次に、それぞれの場合における対応について考えてみよう。
●「相手」に問題が生じている場合
例「Aさんが涙目でオフィスに入ってきた」(図「行動の窓」(1)のエリア)
私にとって受容できる行動だが、相手に満たされないニーズがある「シグナル」が出ている場合を考えてみよう。涙目でオフィスに入ってきたAさんに対し、リーダーはどういう行動をとるべきだろう。
「L.E.T.」では「アクティブ・リスニング」という手法を使って相手の問題解決を促す。つまり、Aさんの話を聞く場を設け、共感的で誠実な聴き手となるのである。重要なのは「問題の答えは、悩んでいる人自身が持っている」と心得て、自分は良きカウンセラーに徹すること。そして、話し手の感情放出を助けるのだ。
具体的なスキルとしては、相手の「状況(事実)」と「感情」を鏡のようにフィードバックする。たとえば、「実は、B先輩にひどく怒られて、悲しくなったんです」とAさんが打ち明けた場合、「そうかBさんに叱られて(事実)、落ち込んでいる(感情)んだね」と言葉を返すことで、相手を理解していることを伝えるのである。
研修では、ロールプレーを通じて「アクティブ・リスニング」のコツをつかむ。実際にやってみると、聴き手としてフィードバックを行うのはけっこう難しい。かなり集中して聴かねばならないし、単なる「オウム返し」を避けるためには、ボキャブラリーも必要となる。