マイケル・E・ポーターとマーク・R・クラマーが2011年に発表した論文「Creating Shared Value」により、CSV(共有価値の創造)という考え方が広く知られるようになりました。CSVとは、営利企業が本業を通じて経済的利益と社会的問題解決の両立を目指すという、企業戦略の新たな考え方です。ネスレ、GE、ダノン、キリンなど、さまざまな企業がCSVに取り組み始めています。
伝統的な戦略理論では、利益追求と社会的問題解決はトレードオフの関係にあると考えられてきました。新自由主義を提唱した経済学者ミルトン・フリードマンは、企業の社会的責任は利益の極大化であり、経営者が社会問題の解決に1ドルでも投資すれば、それは株主に対する許されざる課税であると述べ、社会や環境への貢献は、あくまで納税を通じて政府などの専門家に委ねられるべきだと主張しました。
それに対してポーターらは、利益追求と社会問題解決の間に相乗効果が存在するケースを指摘し、経済性と社会性は同時に追求できると主張したのです。そのケースは「インサイド・アウト(内から外へ)」と「アウトサイド・イン(外から内へ)」の2つに大別されます。前者は、本業での製品・サービスや事業プロセスが社会的問題の解決に資するケースです。例えば、トヨタ自動車のプリウスは、売れれば売れるほどガソリン車に比べてCO2排出量を減らせるため、結果として環境負荷を低減できます。後者は、本業の競争環境を改善するために、社会問題の解決に取り組むケースです。米シスコは、貧困地域でのプログラミング教育を無償で行うことにより、低所得者層の職業能力を向上させると同時に、優秀な人材の優先的な確保を可能にしました。
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