事務処理作業に電子化対応…仕事が膨らみ続ける
この教員の年齢構成の変化はもちろん予測されたことだ。本来は、経験値が下がることを想定したうえで、仕事のやり方を見直す必要があったのだが、現場ではなかなか仕事の見直しは進んでいないという声が多い。圧倒的に書類作成や報告などの事務処理作業が多く、さらに部活などに追われて授業準備ができない、というのである。生徒たちと向き合うことにひかれて教員を選んだのに雑務に追われる、という若手教員の悲鳴はあちらこちらで聞く。
ギガスクール構想などで急速に電子機器を使った子どもたちへの教育が始まっている一方で、授業内での電子化対応は先生たちの力量に依存している。そうでなくても授業の準備が大変なところに電子化対応などの新しい業務も降ってくる。さらに事務処理もある、と仕事がどんどん膨らむ傾向にあるわけだ。
追い詰められて精神を病んでしまう新人が増えているという冒頭の朝日新聞の報道は、現場からの切実なSOSだと捉えるべきだろう。
岸田内閣が6月16日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」いわゆる骨太の方針には、「2024年度から3年間を集中改革期間」として対策に乗り出すとしている。具体的には「小学校高学年の教科担任制の強化や教員業務支援員の小・中学校への配置拡大を速やかに進める」ことや新たな手当ての創設など給与体系の見直しを行うとしている。実質的な残業時間に当たる「時間外在校等時間」を月45時間、年360時間以内とする「上限指針」を実現するとしている。
公立学校という職場に「将来性」を示せるのか
だが、現実には環境は一段と厳しくなる。教員を増やそうにも一段と人材確保が難しくなるのは確実な情勢だからだ。2022年10月に22歳だった人口、つまり2023年に大学を卒業した年齢に当たる人の総数は126万4000人だった。これが2024年は124万3000人、25年120万1000人、26年114万8000人、27年114万8000人と急速に減少することが分かっているのだ。そうした中で、教員へのなり手を確保していくことは容易ではない。
一方で、小学校1年生に入学する6歳年齢は今年入学が100万人を切って97万8000人となったが、3年後には87万1000人に激減する。その先6年後は79万8000人だ。これは生徒の数が減るから教員不足が解消する、という意味ではない。生徒が減れば学校自体の存続が危うくなり、統廃合などの議論が加速する。
つまり、これから教員になろうとする人たちにとっては、公立学校が「衰退」していく存在であることが一段と明らかになってくるのだ。自分が働く場としての「将来性」をどこまで信じることができるのか、大きな問題になってくるわけだ。これから教員になっていく若者たちの将来に向けたキャリア・パスを示すことができなければ、いくら手当てを新設したとしても、優秀な人材は集まらないだろう。