教員不足が深刻化している
「教員不足『悪化した』4割 依然深刻、文科省調査」(共同通信6月20日配信)「新任教諭 増える退職 目立つ精神疾患 09年度以降で最多」(朝日新聞6月21日朝刊1面)。
このところ小中学校など公立学校の教員不足を伝える報道が増えている。前者記事の調査では、都道府県・政令指定都市の教育委員会のうち43%に当たる29で教員不足が前年度よりも「悪化した」と回答。「改善した」と答えた11を大きく上回った。「同程度」が28で、教員不足は深刻な状況が続いていることが明らかになった。その一方で、せっかく新規採用してもすぐに辞めていく事例が増えている、と報じているのが後者の記事だ。いずれも学校現場の職場環境に問題があり、学校での「働き方改革」や待遇の見直しが待ったなしだとしている。
「全員合格」では質を確保できない
実際、教員のなり手は大きく減っている。公立の小中高校のほか特別支援、養護、栄養の教員も含めた「教員採用試験」の受験者数は2013年に18万人いたが、2021年には13万4267人にまで減少している。2000年前後は10倍を超える難関試験だったが、今や3.8倍にまで低下した。
それでも定員を充足しているのではないか、と思われがちだが、そうは言い切れない。教員の質を確保するためには全員を合格とするわけにはいかないうえ、合格を出しても民間企業などに就職して実際には教員にならないケースも少なくない。大分県や熊本市などで採用予定数を確保できない「定員割れ」が生じている。冒頭の調査の「教員不足悪化」と答えている都道府県では何がしらかの定員の不充足が起きていると考えられる。
なぜ、教員のなり手が足りないのか。ひとつは大学新卒年代の人口がそもそも大きく減っていることだ。加えて、新型コロナの終息で、企業の採用活動が活発になり、民間企業に流れる人が増えている。国家公務員や弁護士なども受験者が大きく減少しており、難関試験を避ける傾向が強まっていることも背景にある。