ミニバンを敬遠していた層に刺さった

開発と生産コストが圧縮された厳しい状況下で、ホンダはミドルセダン「アコード」のプラットフォームをベースとしたミニバンを開発するしかなかった。だが、それがオデッセイの低床・低全高ミニバンという唯一無二の強みとなった。

当時のミニバンは、後輪駆動車が主流で、積載性を重視したワンボックスに近い作りだった。そのため、構造的に床面が高く、デザインも垢抜けていなかった。

一方、オデッセイは、低床・低全高のため、高い運動性能とスタイリッシュなデザインを手に入れた。セダン感覚の乗降性や走りは、ミニバンを敬遠していた層を取り込むことにつながった。

また前輪駆動としたことで、床面がフラットになり、低全高を感じさせない室内空間を実現し、運転席と後席の移動が可能なウォークスルー機能も備えていた。

この初代は、2代目にモデルチェンジするまでの5年間で国内の販売台数は43万3940台と大ヒット。ホンダの業績はV字回復する。ちなみに、この販売台数は、歴代オデッセイでトップの国内販売記録となっている。

ホンダは初代オデッセイのコンセプトを「クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)」としていた。この大ヒットを皮切りに、次々とRV車を投入していく。

クリエイティブ・ムーバー第2弾として「シビック」のプラットフォームをベースとしたクロスオーバーSUV「CR-V」を発売。つづいて、専用開発のプラットフォームを用いたファミリーミニバン「ステップワゴン」を投入。いずれも大成功を収めた。

写真=時事通信フォト
ホンダが発売した2代目オデッセイ。冒険を避けたキープコンセプトによる手堅いモデルチェンジだった。

従来のミニバンを覆した

その後のミニバン市場は、オデッセイに影響され低床ミニバンが主力に。オデッセイ自身はさらなる独自の進化を遂げた。

1999年に登場した2代目は、初代の魅力を受け継ぐキープコンセプトながら、新たな提案も行った。それが2001年に新設したスポーティーグレード「オデッセイ アブソルート」だ。

車高を落とした専用サスペンションと大径タイヤを装備することで、持ち前の低重心構造をより強化。カーブでの車体のロールを抑えた安定感ある走りを実現。まさに従来のミニバンの常識を覆す、新ジャンルのスポーツミニバンに仕上げた。その結果、子育てによりミニバンにしぶしぶ乗っていたクルマ好きを取り込んだのだ。

2003年登場の3代目では、新開発の低床プラットフォームにより一般的な機械式立体駐車場に収まる1550mmという全高と、ミニバンに求められる3列シートレイアウトの両立を実現。

スタイルもより流麗でスポーティーなものへと生まれ変わらせ、独自の強みであったスポーティーグレード「アブソルート」の走りも磨き上げた。持ち味の走りの良さだけでなく、都市部での使い勝手が高まったことで、オデッセイを指名買いするファンを増やした。