オーストラリアの航空最大手・カンタス航空が、2025年に世界最長の定期航空路線を開設する。シドニーと英ロンドンを結ぶ直行便で、20時間をノンストップで飛び続ける。このような超長距離フライトはなぜ可能になったのか。航空ジャーナリストの北島幸司さんは「最新機に搭載されたロールス・ロイス製の高性能エンジンのおかげだが、理由はそれだけではない」という――。
パース―ロンドン線を飛ぶボーイング787-9
写真提供=カンタス航空
パース―ロンドン便を飛ぶボーイング787-9型機。シドニー・ロンドン間の「世界最長路線」開設にいたる検証路線として活用されている。

1万7000km超をノンストップで飛び続ける直行便

オーストラリアの航空最大手・カンタス航空は、2025年末にシドニー・ロンドン、シドニー・ニューヨークを直行便で結ぶ、定期路線を開設する。

2路線のうち、より長いシドニー・ロンドン間は1万7000kmを超える世界最長の定期航空路線で、約20時間の長距離フライトになる。現在同区間は、飛行機の性能的に燃料の補給が必要なことからシンガポールを経由しているが、直行便によって約4時間短縮される。なお、現時点で最長路線はシンガポール航空のシンガポール・ニューヨーク間(フライトは約19時間)である。

約20時間の長距離フライトはなぜ可能になったのか。その理由は航空機の性能、とりわけ高性能エンジンを積んだ新機材を導入したことが大きい。

現行機に比べ、推力26%、燃費25%向上した最新エンジン

世界最長路線には、双発エンジン機の「エアバスA350-1000」が新しく採用された。2025年後半から12機の導入を予定している。

これはエアバス製のワイドボディ(双通路機)で、A350型の中で胴体が最も長い長胴型だ。全長73.79m、最大座席数440席、航続距離は1万6100kmに達する。この機体の特徴は、より推力の高いエンジン「トレントXWB-97」(ロールス・ロイス製)を採用したことである。これが決め手になったと言っていい。

現在のシドニー・ロンドン便は2007年に運航開始した。オール2階建てのエアバスA380-800型機(エンジンはロールス・ロイス製・トレント900)を使用し、シンガポール経由で運航している。現行機と旧式エンジンの性能を比べてみよう。

トレントXWB-97の推力は9万7000ポンドでトレント900の推力比で26%アップしている。ロールス・ロイスの資料によると、新しい高温タービン技術やより大きなエンジンコア、ファンの空力特性の組み合わせで推力を増加させた。機体の空力改善やエンジンにより、従来機に比べて燃費は25%削減できた。

なお、シドニー・ロンドン間の「世界最長路線」開設にいたる検証路線として活用されているパース・ロンドン便(パースは豪州南西の都市、1万4498km、所要時間18時間)では、ボーイング787-9型機(エンジンはロールス・ロイス製のトレント1000)が使われている。こちらと比較しても推力は30%向上している。

ロールス・ロイス「Delivering value through innovation」より
ロールス・ロイス「Delivering value through innovation」より