同型の機材を導入する他3社と比べてもカンタス航空の上級クラスの比率は突出して高い。ブリティッシュ・エアウェイズは33%、キャセイパシフィック航空23%、カタール航空14%で、カンタス航空では44%がファースト・ビジネス・プレミアムアコノミーの「上級クラス」となる。

ファーストクラスは、幅広のベッドにリクライニングチェア、大型モニターが設置されている。カンタス航空が公開した機内写真を見ると、ホテルの客室のような座席だ。他にもどのクラスの乗客でも利用できるというウェルネスゾーンまで設けており、世界一の路線に投入するにふさわしいフラッグシップ機といえる。

エアバスA350-1000のファーストクラス
写真=カンタス航空
A350-1000のファーストクラス。20時間超の長距離飛行にたえられるよう、広さが確保されている。

カンタス航空が直行便にこだわる2つの理由

そもそも、なぜ彼らは直行便にこだわるのか。理由は2つに整理できる。

一つは北半球の国からは遠く離れた南半球の国の宿命だ。オーストラリアから出発すると、欧米先進国のどこに行くにも超のつく長距離飛行になってしまう。カンタス航空は、以前からほぼ全ての国際線=長距離飛行だった。

航空機にとっては負担の大きい長距離を、世界一と言われる安全記録を更新しながら飛行してきた誇りがある。まさに世界のエアラインの中で長距離ブランドのリーダー的存在であり、直行便開設にも並々ならぬこだわりをもっているのがカンタスなのだ。

カンタス航空ウェブサイトより、カンタス航空の国際線ネットワーク地図
カンタス航空の航空路線。基本的にどの国行くにも長距離移動になる。南半球の国の宿命だ。(出典=カンタス航空ウェブサイト

二つ目は、同路線が超長距離線として高い運賃設定が可能な「ドル箱路線」であり、他社との激しい競争を繰り広げてきたからだ。オーストラリアはイギリスの旧植民地であり、多くの同国系の移民がおり、親族訪問などの定期的に発生するため高い航空需要がある。それを確実に取り込むためには他社にはない「直行便」で差別化をする必要があった。

現在、カンタス航空のシドニー・ロンドン便はシンガポールを経由する。所要時間は24時間~25時間ほど。最大のライバル・ブリティッシュ・エアウェイズもシンガポールを経由し、所要時間はほぼ同様となる。

その他、カタール航空、タイ航空、マレーシア航空、中国系エアラインは自国をハブにして両国をまたいでいる。ANAとJALも東京を経由して結んでいる。

「ドル箱路線」だから競争が激しい激戦区になっている

近年では、中東系エアラインも本腰を入れる。ドバイ・シドニー便を毎日3便飛ばしているエミレーツ航空がカンタス航空と提携した一時期はカンタス航空の経由地もドバイ国際空港に切り替わったことがある。その際、エミレーツ航空は世界一の大きさのエアバスA380を就航させて豪華さをアピールした。慌ててカンタス航空も同型機を入れたほどだ。それほどの激戦区なのだ。

カンタス航空は南半球にある国を代表するエアラインとして、長距離路線の多い宿命を背負い、どのライバルにも負けないように所要時間にこだわる必要があった、というわけだ。