とはいえ、金融引き締めで金利が上昇すれば、資産市場が調整色を強め、価格が下落することは当然のことだ。住宅価格が下落しなくとも、それは財政支出で住宅価格を維持しているに過ぎない。その財政出動の原資は税金であるし、税金で賄えない分は、自ずと国債の発行に頼らざるを得ない。こうした住宅価格維持はいずれ限界を迎える。
「少子化対策のコスト」を将来世代に押し付けるべきではない
住宅価格が下がらなければ、次世代の住宅購入が難しくなるという新たな問題が出てくる。次世代が住宅を購入できなければ、その世代の子育ても困難となり、結局は出生率を押し下げる方向に働くかもしれない。次世代の住宅購入を支援するための政策を強化すれば、財政を悪化させ、そのツケを次の世代が払うことになりかねない。
称賛されることが多いハンガリーの「異次元の少子化対策」だが、同時にハンガリーの経験は、大規模な少子化対策が持つ一種の矛盾を示す好例ともいえそうだ。住宅に関して言えば、購入支援策を採って需要を刺激するよりも、子育て世代に対する廉価な住宅供給に努めたほうが、合理的で有効なサポートになったのではないだろうか。
有効な少子化対策が大規模に行われることは結構なことだが、結局は、コストの大部分を将来世代に押し付けるようなことがないように制度を設計する必要があるのだろう。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)