住宅価格は5年で2倍に跳ね上がる

一方で、ハンガリー政府によるこの「異次元の少子化対策」は、看過できない副作用をハンガリー経済にもたらしている。

具体的には、住宅価格の高騰だ。2015年を基準(100)とした場合、ハンガリーの名目住宅価格は2022年に253.6と2.5倍も上昇した(図表1)。一方、物価変動の影響を除いた実質住宅価格も175.0と1.75倍上昇した。

出所=欧州連合統計局(ユーロスタット)

同じ基準で他のEU諸国と名目住宅価格の変化を比べても、ハンガリーの住宅価格の上昇が突出している(図表2)。EU27カ国の平均は2015年対比で1.6倍であり、この水準を上回る国はハンガリー(2.5倍)を入れて14カ国あるが、オランダ(1.9倍)以外は、ポルトガル、チェコ、リトアニアといったヨーロッパの小国が並んでいる。

出所=欧州連合統計局(ユーロスタット)

長年にわたる中銀による金融緩和を受けて、各国の不動産価格は上昇が続いた。特にヨーロッパでは、欧州中銀(ECB)が2010年代半ばに資産購入策を開始したことに加え、マイナス金利政策に踏み込んだことで、ユーロ通貨圏と非ユーロ通貨圏を問わずに低金利環境が定着、不動産・住宅価格の上昇に拍車がかかった。

原因は、多子世帯ほど手厚い住宅購入支援

そうした中でも、ハンガリーの住宅価格の上昇は目覚ましかった。その最大の理由が、政府による「異次元の少子化対策」にあったことは紛れもない事実である。

具体的には、ハンガリー政府がCSOK(Családi Otthonteremtési Kedvezmény)と呼ばれる住宅購入支援策を実施したことが、住宅価格の上昇を一段と促したのである。