同じ部屋がなく、家具類も同じものが使えない
建物の内装では、オリジナルのデザインを保存・活用しながら、いかにホテルとしての機能を満たし、世界観をつくり上げていくのか、外観以上に難題だった。
ホテルとして必要な設備や使いやすさをつくり込むために、現在、ザ・ホテル青龍 京都清水の総支配人を務める広瀬康則さんは、開業の2年前からプロジェクトに参加していた。
「最初に見た時は、ほんとにこれがホテルになるのかなって思いました。教室を改装しているので、同じ部屋がひとつもないんです。45平方メートルだったり45.6だったり47だったり。梁の場所が違ったり。教室2つで3部屋くらいをつくっていますから。
部屋の形が違うとオペレーションがやりにくいですし、部屋の家具類も同じものが使えません。それに元々が校舎なのでバックスペースがない。例えば職員室もみんなから見える構造です。やはりそこをクリアするのが大変でしたね」
元の校舎を活かす以上、部屋の形から生じる課題などは個別に解決していくことにして、小坂さんは、部屋の内装デザインのコンセプトを2種類設定した。
映り込みで、美しさへ視線を誘う
「京都で手掛けるプロジェクトは、やはり和風の建物が多いんですが、今回は洋館、まして小学校なので、あまり既存で参考になるものがないんですね。それで、京都に来た日本人も外国人も、京都の和ではなく、京都の歴史を感じるプレステージの高い部屋にするには何が必要なのか、とにかく想像していきました。
客室には、元教室だったものと、増築棟のものと、2タイプがあるのですが、両者でデザインのコンセプトを変えました。元教室の部屋は、建物の西洋的なディテールをなるべく残して、そこにちゃんと視線がいくようにしました。その上で家具やアートで、ヨーロッパ的な匂いを出したり、京都風というか和風のものを使ったり、そういったものを交ぜていきました。
増築棟の部屋は、モダンなデザインにして、例えば扉を開けると草木染のスクリーンがあったりと、モダンなところに日本的なディテールを入れていきました」
校舎の美しいディテールを残し、そこに視線が向くようにする。そのために、今回、小坂さんが用いた手法のひとつが、映り込みを利用することだった。