「政治の無駄遣い」への怒りは大きい

また、1980年代から2000年頃にかけては所得減税などで低下していた「税負担」も2000年以降は増加に転じている。消費税率の相次ぐ引き上げは「社会保障財源を賄うため」と説明されてきた。つまり保険料としても、税金としても、社会保障費は応分の負担をしてきたと国民は感じているのだろう。それに比べると、政治の無駄遣いは酷過ぎるということなのではないか。

そんな意識が昨今の政治情勢にも跳ね返っているのではないか。日本維新の会が躍進しているのも、財源確保を先送りしたまま歳出拡大に走る政府・自民党の対抗軸として批判票の受け皿になっているのだろう。

旧民主党が政権を奪取したのも、政官財の利権構造による政治の無駄遣いに国民が反発したことが大きかった。「事業仕分け」などによる無駄の撲滅を訴えたが、政権を取ると「ばらまき」を優先する結果になり、国民の失望を買ったということだろう。経済学者も4割以上の人が「政治の無駄遣い」を挙げており、歳出改革を行わなければ財政赤字は収まらないという点では一致している。

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国民が「感じて」いる無駄遣いの原因

もちろん、経済学者が言うように社会保障費が最大の赤字要因だという立場にたてば、年金支給開始年齢の引き下げや、医療費の自己負担割合の引き上げなどが必要になる。そんな痛みをツケ回しされるのは御免だという国民側のエゴ的な部分がもちろん無いわけではない。

最大の開きがあった公務員人件費はどうだろう。数字を見ている経済学者は、公務員人件費が財政の大きな割合を占めているわけではないことを知っている。一般会計予算114兆円のうち、国家公務員の人件費は5.3兆円と5%に満たない。そのうち2.2兆円が自衛官や裁判所職員などの人件費である。行政機関だけで見ると30万5000人が働いているが、人口比にすれば他の先進国に比べて人数も多いとは言えない。つまり、人件費が財政赤字の原因だということにはならないというのが、数字から見た場合の結論だ。経済学者はこの筋に忠実な答えをしているわけだ。

国民の多くは国家公務員の人件費総額がいくらかなど知らないので、無知のなせる回答だと切り捨てることも可能だ。だが、国民はさらに深く「感じて」いるのではないか。結局、さまざまな政治の無駄遣いも、それを御膳立てしている官僚のせいではないのか。外郭団体に無駄な予算を付け、天下りで自分たちの利益を貪っているのではないか。