「がまん」を続ける高齢者

人間、基本的に年をとると、それまでの社会常識にがんじがらめに縛られなくてもよくなるはずです。まして、セカンドライフとなったならば。

定年退職すれば、「○○社の社員」「公務員」という縛りがなくなります。現役時代にはしたくてもできなかったことも、一個人として堂々と行ってよくなります。

ところが、現実には、その後も相変わらず人目を気にしながら過ごす高齢者が多いようです。心から好きなことをやろうとせず、現役時代と同じように自分を抑えて、「がまん」を続けるのです。

幸せな高齢者とそうでない高齢者を分けるもの

がまんは、生活全般に及びます。

医者から「血圧やコレステロールを下げなければいけない」と指導を受けたことで、塩分や油脂の多い、おいしい料理を食べることを控える。老後資金を過度に心配し、お金を使わずにひたすら倹約に努める。着たい服があっても、「高齢者らしくない」と後ろ指をさされることを気にして、地味な服ばかり選んで着る。

つまるところ、高齢者は悪目立ちしないようにがまんをしないといけない――そう思い込んで老後の時間を生きている人が、日本人には多いように思えてなりません。

でも、人生を折り返し、定年も越え、なお、がまんばかりしているのは果たして幸せなのでしょうか。私はそうは思いません。幸せな高齢者というのは、要するに好きなことができている人だと思います。

日本には「マインドリセット」が必要だ

かつて日本では節制が美徳とされました。その当時を生きていた人は、遊ぼうとしても心にブレーキがかかって存分に遊べなかったことでしょう。

一方で、いま60代、70代の方々は、日本が豊かだった時代も知っているわけです。あのバブルの時代も経験しています。そのため、人生を楽しむ能力は決して低くないと思います。

私は、いまこそ「マインドリセット」が必要だと思うのです。高齢者になったらがまんをするのではなく、好きなことをしていい。高齢になるというのは、すなわち自由になることなんだ、ととらえていただきたい。