ジャニーズがいなくなったらテレビの現場は回らない?

まさに寡占とはこのこと。こんな状態で、もしジャニーズタレントの出演を見合わせるということになったら? 「とても現場が回らない!」というのが、番組プロデューサーをはじめとする制作スタッフの正直な声であろう。最多のTBSは出演番組が13本もあり、全体の約30%を占める。

日本テレビ本社(筆者撮影)

しかし、5月14日にジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が謝罪動画を公開し、各局のニュース番組も、これまで数十年間の沈黙が嘘のようにジャニー喜多川の性加害を告発する元タレントたちの声を報じ始めた。

テレビ局は「出演番組の制作・放送をストップするわけにはいかないが、企業コンプライアンスとして見解は発表しなければならない」という難しい立場に置かれた。そこで5月25日、テレビ東京の定例記者会見で、高野学コンテンツ戦略局長が絶妙な落としどころを示した。

「タレントのみなさんに問題があるわけではないと考えますので、今後も出演していただく方針です」

この会見では石川一郎社長も「タレントに罪や問題などがあるわけではない。さまざまな形で活躍していただきたい」とコメントした。

「所属タレントに罪はない」が落としどころに

続く5月26日、フジテレビの定例会見では大多亮専務が「所属タレントの方々に問題があったわけでございませんので、番組について変えたり、それによって何か変更する予定はない」と説明。さらに、5月30日に定例記者会見を行ったテレビ朝日・篠塚浩社長は「タレント起用に変更はございません」と語った。

筆者作成

5月31日にはTBSの龍宝正峰取締役が「個人の方が問題を起こしたわけではない。キャスティングを変更することは考えておりません」「事務所さんの対応が発表されておりますので、その状況を見守ってきたい」とコメントした。

つまり、「ジャニー喜多川氏の性加害」という問題を否定するわけではないが、既に故人であるし、番組に出ているアイドルたちは加害者側ではなく被害者側である(当事者であるかは不明)という見解である。性加害問題は取引先であるジャニーズ事務所にきっちり検証をしてもらうとして、所属タレントに罪はないので予定どおりショー・マスト・ゴー・オン。各局が口をそろえてそう言い出したわけだ。