日本で論争になった「ジェンダーレストイレ」も火種に
日本でも論争になったトイレの分け方についても、大統領選が近づいている今、政治的な論争の火種になっている。
アメリカはオバマ政権だった時代に、全米の学校で子供たちが自分が自認するジェンダーのトイレに入れるようになった。しかし保守派の抵抗が大きく、トランプ大統領時代にすぐに撤回された。
それどころか、前出のフロリダ州では先月、未成年トランスジェンダーへの医療禁止法案と同時に、州立の施設、公立学校などで、生まれながらの性ではなく、自認性のトイレを使った場合、犯罪となる法律が成立した。共和党議員は「公共の安全、良識、礼節を守るため」と説明している。
しかし、UCLA法科大学院ウィリアムズ研究所の最新の研究では、「トランスジェンダーが自分の性自認に沿った公共施設を使用することによって、そうでない人が脅かされるという証拠はない」と、論争をはっきり否定している。
自認するジェンダーのトイレを使っていいという論調は、やはり同性婚の合法化とともに高まった。その理由は、とりわけ若いトランスジェンダーが長年、アンチLGBTQからのハラスメントや暴力の犠牲になってきたからだ。
ウィリアムズ研究所の発表によると、トランスジェンダーが暴力犯罪の犠牲になる確率は、体の性別と性自認が一致しているシスジェンダーの4倍。いじめなどで心を病み、10代の自殺率もシスジェンダーの7.6倍とされている。
トランスジェンダーが次期大統領選の争点に?
女性と自認しているのに、体の性が男性だから男子トイレに入らなければいけない、またはその逆の状態になると、ハラスメントを受ける可能性が上がるのは容易に想像できる。そのためトランスの子供たちはトイレを我慢して尿路感染症を起こすなどの健康問題も、数多く報告されている。
ちなみにリベラル州は基本、今も自認するジェンダーのトイレに入ることができるし、ニューヨークは、公立学校にジェンダーレストイレを設置することが義務付けられている。飲食店など、個室が1つずつしかないトイレも、男女共用にすることが義務付けられている。リベラル州と保守州の間には生活レベルで天と地のような違いがあり、それほどの分断が生じている。
フロリダ州のデサンティス知事は現在、トランプ氏の有力な対抗馬として共和党の大統領候補に名乗りを上げている。彼は予備選でトランプ氏に勝つために保守票をかき集めており、その格好の材料が、LGBTQでありトランスジェンダーへの攻撃なのだ。
5月にはバドライトの不買運動に続いて、小売大手の「ターゲット」が、6月のLGBTQプライド月間に向けて発売したレインボーカラーの服などを一部撤去した。一部の顧客から激しい苦情が寄せられ、彼らが店員に対する暴力的な行為を行ったためと説明されている。
こうした過激な動きは、今後ますます増えていくと予想される。来年の大統領選は、人口の1%にも満たないトランスジェンダーが争点になるかもしれない。