労働時間が増えても貯金が増える喜びには代えがたい
さて、和夫さんが再就職してから3年後。
長男は無事私立高校を卒業し、働き始め、学費に充てていた分をためられるようになりました。貯蓄は現在300万円と、当初の2倍の額に。いよいよ老後に向けて投資のスタートです。もちろん、初心者ですので、ハイリスク商品には手を出さず、iDeCoやつみたてNISAなど非課税の制度を使いながら、時間を味方につけて長期分散投資を進めていく方針です。
和夫さんは現在55歳。住宅ローンはあと5年で完済予定です。これから20年かけてコツコツと運用していけば、老後、公的年金の補助として生活を支えてくれるでしょう。
和夫さんは再就職後、ポジションは下っ端からのスタートで、「収入優先、夜や土日も働く生活」。奥さんも労働時間を増やしています。二人とも本来目指していた働き方とは違いますが、貯金が増えている現状に満足しているようです。特に奥さんは、「やっぱり貯めていけるのは安心感がありますね」と幸せそう。
「あの時こだわりを捨てられていなかったら、ずっとジリ貧だったと思います」。そう話す和夫さんの表情も、3年前に比べて明るくイキイキとしているように見えます。
このご家庭が起死回生できた最大の勝因は、なんといっても収入UP。一見単純なことですが、人はなかなか生活における優先順位を変えられない。そこを思い切って変えたことが、今の幸せにつながっているようです。
家庭は二の次で稼ぎを優先したい。稼ぎは二の次で家庭やプライベートを大事にしたい。和夫さんは後者のタイプでした。これまで十数年間、家族との思い出を貯めてこられたからこそ、潔く方向転換できたのかもしれません。“思い出貯金”がピンチをチャンスに変える原動力となったのであれば、これからの人生後半戦はより活気づくのではないでしょうか。
経済面で低空飛行が続いていても、人生の折り返し地点で上向きになることは、決して不可能ではないのです。