火砕流とガスが流れ込みやすい谷や沢沿いをなるべく避ける

羽根田治『山のリスクとどう向き合うか 山岳遭難の「今」と対処の仕方』(平凡社新書)

噴火がいったん落ち着くか、噴石の危険が低ければ、早急に噴火口から離れて、より安全な場所に避難することだ。御嶽山の噴火時には、人の頭ほどの大きさの噴石が1キロメートル以上離れた場所まで飛んだので、少なくともそれ以上は遠ざからないと安全圏とはいえない。

避難するときは、ヘルメットやゴーグルがあればそれらを着け、体内への火山灰の侵入を防ぐためにタオルなどで目、鼻、口を覆うこと。噴煙であたりが暗ければヘッドランプを点け、ザックは背中のプロテクターになるので、背負ったままにする。避難経路としては、火砕流や火山ガスが流れ込みやすい谷・沢沿いはできるだけ避けたほうがいい。

生き延びるために、とにかくやれることはすべてやるしかない。もちろんスマートフォンで写真を撮っている場合などではない。そんな余裕があるなら、少しでも噴火口から遠ざかるように努めることだ。

遅々として進まない、周辺自治体による避難確保計画の作成

火山活動が続いている山では、噴火はしなくても場所によって火山ガスが噴出しているところがある。有毒な火山ガスの危険があるエリアでは、地元の自治体や観光協会、宿泊施設がホームページなどで情報を流しているので、事前にチェックする。現地では、決められたルートを外れないようにし、立入禁止のルートや危険区域には絶対に入り込んではならない。ガスが噴出していたり、刺激臭が漂っていたりする場所には、むやみに近づかないほうが無難だ。

なお、御嶽山噴火を受けて2015年に改正された活動火山対策特別措置法は、全国49火山の周辺自治体に対して、「避難促進施設」の指定と「避難確保計画」の作成を義務づけている。避難促進施設は、火山噴火の際に登山者や観光客らが逃げ込める施設で、山小屋やホテルなどの宿泊施設、ビジターセンターなどが対象となる。それらの各施設が退避方法などを決めたものが避難確保計画だ。

ただし、人手やノウハウが不足していることから、2022年3月末時点で施設の指定が済んでいるのは全体の3割ほどで、そのうち計画を作成済みの自治体は55パーセントしかなかった。近年噴火が起きていない地域の作成率がとくに低く、総務省は2022年9月、防災担当の内閣府に対して、市町村への周知徹底やノウハウ提供に努めるよう勧告した。

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