人を起点にした変革5つのステップ

取り組みの例としては、ジョブ型人事制度を前提にした360度評価や、組織間での人材の移動を柔軟にするプラクティス制、経費精算などの社内のバックオフィス業務をデジタルツールをフル活用して完全自動化する取り組み、新たな知見の創出活動としての「Human & Values Lab.®」などがある。いずれもリッジラインズで始まり、富士通本体でも活用・検討されている取り組みだ。

ここまでの富士通の変革の現場を振り返ると、人を起点とした企業の変革に取り組む際のファーストステップとして捉えることができる。

人起点変革のファーストステップ
ステップ① 変革に取り組む明白な理由を示す
ステップ② 企業としての新しい目的を設定する
ステップ③ 対話を通じて企業の目的と従業員の原動力を共鳴させる
ステップ④ 新しい目的や変革に熱意ある現場が行動変容できる環境をつくる
ステップ⑤ ファーストペンギンを設定し、変革を加速する

まず前提としてあるのは、いかに素晴らしい戦略が描けたとしても、トップから現場に至るまでそこにいる人々の行動変容が起きなければ、外から見ていても会社は変わっていないと思われるし、実際、変わっていないということである。そのため、変革に取り組む理由や自社の目的を従業員一人ひとりが理解し、行動に繋げられるための環境づくりがDXの初期ステップでは肝要となる。

「考えたこと」を「実践」に移せる環境を整える

富士通では経営方針説明会においてDX企業への転身を宣言し、全社員に対する強い意識付けを実施した(ステップ①)。続けてパーパスを制定し(ステップ②)、自社が向かう方向性を明確にした上で、対話を通じてパーパスを浸透させていった。それが12万人に向けたメッセージや、パーパスカービングである(ステップ③)。

ここまでくると、ただのスローガンや一過性の取り組みではないということに従業員が気づき始める。本気で取り組みたいという熱意ある現場もちらほら出てくるが、そのときにポイントになるのが、彼らが考え出した新たな施策をすぐに実践できる環境をつくるということだ。

フジトラは全社の変革活動としてそれらを見える化し、活動やその成果がすぐに共有できるような環境を提供した。こうなると、後続が変革に向けて動きやすい状況がつくられ、自発的に挑戦しようとする動きも加速してくる(ステップ④)。