深夜枠ドラマの女王

7位 トリンドル玲奈 いつの間にか深夜枠ドラマの女王に君臨 40点

今年は深夜枠に連続トリンドルの嵐だ。アロマンティックのヒロインを演じた「今夜すきやきだよ」(テレ東)に始まり、主人公に勝手に敵視される編集者役の「ワタシってサバサバしてるから」(NHK)も。

今期では、ヒモを飼ってる女社長役の「私がヒモを飼うなんて」(TBS)、ストイックだが夜食に釣られるパーソナルトレーナーを演じる「月読くんの禁断お夜食」(テレ朝)。

恋愛枠とも深夜のメシテロ枠とも分類しづらい枠でいつの間にか君臨。31歳の今が勝負、と見た。応援する。

6位 堀田真由 適応性と汎用性の高さ、息の長い女優に 55点

今年の頭に、大河よりも話題を呼んだ「大奥」(NHK)。凄絶せいぜつな過去をもつ暴君・徳川家光を狂気と涙で魅せた堀田。時代劇でも浮かないし、現代女性のリアルもいける汎用性は強みだ。

個人的には「いとしのニーナ」(2020・フジ)で見せた強気な女子高生役や「殺意の道程」(2020・WOWOW)で見せた手練れキャバ嬢役などが好み。今期は「風間公親 教場0」(フジ)で新人刑事たちを軽くいじりながらも支える事務員役。西田尚美や堀内敬子のように息の長い女優になると確信した。

「どうする家康」の名場面を演じた17歳

5位 伊東蒼 10代の幼さと脆さと鋭さに心奪われる 55点

ここ2年で最も若くて最も目を引いた女優、といってもいい。

まずは映画だ。初見は『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016・宮沢りえ主演)。複雑な家庭環境を達観しているかのように見えて、自分を捨てた母親への愛情を捨てきれずにいる幼気いたいけな小学生の役。なんだこの子は! と思った。その後も、映画『空白』(2021・古田新太主演)、『さがす』(2022・佐藤二朗主演)で、やや問題のある主人公の娘を演じていたのだが、両作ともに深く印象に残った。

画像=映画『さがす』公式サイトより

不遇のリアルを切々と淡々と演じる姿に、台本には書いていない心情描写を自然と体現できる女優なのだと感心したのだ。

ドラマでは、気持ちを言語化することに戸惑う繊細な女子を好演。「ひきこもり先生」「おかえりモネ」(2021・NHK)で演じた女子は、どちらも大人が見落としがちなSOSを発している役だ。強者の理論にドブ漬けされて、配慮や想像力に欠けた大人を、ハッとさせる難役だったと思う。

5位にした最大の理由は「どうする家康」第14話の阿月役だ。合わせても2~3話分の出演だが、いじらしさと清々しさに心奪われた。泣いた。

下級武士の娘・阿月は、口減らしで父親に売り飛ばされたが、織田信長の妹・お市(北川景子)に救われて浅井家の侍女となる。浅井長政の謀反を家康に知らせるべく、一晩中山道を走り続けた後で息絶えるという強烈なエピソード。武家で女に生まれた不遇を味わったが、お市に拾われて幸せだった阿月の短い生涯。この役、伊東蒼以外に誰が演じられただろうか。

6月スタートの「やさしい猫」(NHK)も楽しみにしている。